部分入れ歯と総入れ歯の違いは?|補綴歯科専門医黒崎俊一が回答

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Q:部分入れ歯と総入れ歯は、何が違うのでしょうか?

入れ歯には「部分入れ歯」と「総入れ歯」があると聞きました。 何本くらい歯を失ったら総入れ歯になるのでしょうか。例えば、歯が1本しか残っていない場合でも部分入れ歯なのでしょうか。 部分入れ歯と総入れ歯の違いや、どのように決まるのかを教えてください。
A:基本的な違いは「自分の歯が残っているかどうか」です
部分入れ歯と総入れ歯の違いというと、「失った歯の本数」で決まると思われる方が多いかもしれません。 しかし、基本的な考え方はもっとシンプルです。 自分の歯が残っている場合に使うのが部分入れ歯、歯をすべて失った場合に使うのが総入れ歯です。 例えば、上あごに14本の歯があって、そのうち1本だけ失った場合でも、入れ歯で補えば「部分入れ歯」です。 反対に、上あごの歯をすべて失っていれば、上あごに装着する入れ歯は「総入れ歯」になります。 なお、上あごと下あごは別々に考えます。そのため、上は総入れ歯、下は部分入れ歯という方も珍しくありません。

歯が1本しか残っていなくても「部分入れ歯」?

ここが少し面白いところです。 例えば、上あごに自分の歯が1本だけ残っているとします。 その歯を残して、失ったほかの歯を入れ歯で補うのであれば、基本的には部分入れ歯の範囲になります。 一方、その最後の1本を抜歯して、自分の歯が1本もない状態になれば、作る入れ歯は総入れ歯になります。
つまり、極端な例では、「歯が1本残っているか、0本なのか」によって、部分入れ歯と総入れ歯が分かれることがあります。
上下それぞれに1本ずつ歯が残っている場合も同様です。その歯を残して入れ歯を作るのか、抜歯して総入れ歯にするのかによって、入れ歯の考え方は大きく変わります。 ただし、実際の治療では「1本残っているから部分入れ歯」「抜けば総入れ歯」というほど単純ではありません。 残った歯の状態によっては、その歯や歯根を利用するオーバーデンチャーという方法が検討されることもあります。

部分入れ歯は、残っている歯を利用して支えます

部分入れ歯では、一般的に残っている歯を利用して入れ歯を安定させます。 保険の部分入れ歯でよく見られるのが、残っている歯に金属のバネ(クラスプ)をかける方法です。 残っている歯が、入れ歯を支えたり、ずれたり外れたりするのを防ぐ役割を果たします。 そのため部分入れ歯では、単に「何本の歯が残っているか」だけではなく、次のような点が重要になります。
  • どの位置に歯が残っているか
  • 残っている歯がしっかりしているか
  • 歯周病が進んでいないか
  • 入れ歯を支えられる状態なのか
  • かみ合わせがどうなっているか
同じ「3本の歯が残っている」という方でも、その3本がどこに、どのような状態で残っているかによって、入れ歯の設計は大きく変わります。

総入れ歯には、支えにする自分の歯がありません

総入れ歯は、基本的に歯がすべて失われたあごに装着する入れ歯です。 部分入れ歯との大きな違いは、入れ歯を支える自分の歯がないことです。 そのため、歯ぐきやその下にあるあごの骨の形、唾液、入れ歯の形、かみ合わせなどを利用して、入れ歯を安定させます。 特に総入れ歯では、型取りやかみ合わせの調整が使い心地に大きく関係します。 また、一般的に上の総入れ歯と下の総入れ歯では安定させる条件も異なります。 下あごには舌があり、入れ歯を置ける面積も上あごより限られるため、下の総入れ歯の安定に苦労される方もいらっしゃいます。

「1本しか残っていないなら抜いた方がいい」とは限りません

ここは、とても大切な点です。 残っている歯が1本だけだからといって、総入れ歯にするために抜いてしまった方がよいとは限りません。 その歯がどのくらい健康なのか、今後どのくらい維持できそうなのか、入れ歯の支えとして利用できるのかなどを診断して判断する必要があります。 一方で、歯周病などによって大きく揺れている歯や、保存することが難しい歯を無理に残すことで、入れ歯の設計や安定に影響することもあります。
「自分の歯だから、とにかく残した方がいい」とも、「1本だけなら抜いて総入れ歯にした方がいい」とも一概には言えません。
残すことのメリットと、残すことによって生じる問題の両方を考える必要があります。

部分入れ歯から総入れ歯になることもあります

最初は部分入れ歯だった方が、年月とともに残っている歯を失い、最終的に総入れ歯になることもあります。 だからこそ部分入れ歯を作る際には、現在失っている歯だけを見るのではなく、残っている歯をこれからどう守るかという視点も重要です。 入れ歯は、失った歯を補うためだけのものではありません。 残っている歯にかかる負担や、これから起こり得る変化まで考えて設計することが大切だと私は考えています。

補綴歯科専門医・黒崎俊一の回答

部分入れ歯と総入れ歯の最もわかりやすい違いは、「自分の歯が残っているかどうか」です。 極端な例を挙げれば、歯が1本だけ残っていて、その歯を利用して入れ歯を作れば部分入れ歯の範囲になります。その歯を抜いて歯が1本もなくなれば、総入れ歯になります。 しかし、治療で本当に重要なのは「部分入れ歯か総入れ歯か」という名称ではありません。
  • その歯は残した方がよいのか
  • 残した場合、入れ歯をどのように設計するのか
  • 将来、残っている歯を失ったときにどうするのか
ここまで考えて治療方法を決めることが大切です。 特に「残っている歯があと1本、2本」という方は、その歯を残すか抜くかによって、その後の入れ歯治療が大きく変わることがあります。

抜いてしまった歯は元には戻せません。抜歯を勧められた場合には、なぜ抜歯が必要なのか、残すことはできないのか、残した場合と抜いた場合で入れ歯がどう変わるのかについて、説明を受けてから判断されることをおすすめします。

回答した歯科医師

くろさき歯科 院長 黒崎俊一

黒崎 俊一

医療法人社団アーユス 理事長 くろさき歯科 院長

資格 日本歯科専門医機構 補綴歯科専門医 日本補綴歯科学会 専門医

黒崎俊一院長の詳しいプロフィールはこちら

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