歯はなぜ奥歯から失われやすいのですか?|補綴歯科専門医黒崎俊一が回答

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Q:歯はなぜ奥歯から失われやすいのですか?

大人になってから歯を失う場合、奥歯が失われることがあると聞きました。なぜ奥歯は失われやすいのでしょうか。また、奥歯を失ったときは、どのように考えればいいですか?

A:奥歯は、磨き残しが出やすい形・長年の使用・強い噛む力・歯周病・治療の繰り返しが重なりやすい歯です

「歯を失う」と聞くと、前歯が抜けることをイメージする方もいるかもしれません。しかし、大人になってから歯を失う場合、長年にわたって噛む力を受けてきた大臼歯が失われることがあります。 奥歯が失われやすい背景には、奥歯ならではの理由がいくつか重なっています。

「奥歯」とは、どの歯のことでしょうか

歯科では、一般に小臼歯と大臼歯をまとめて「臼歯」と呼びます。 前から数えると、
  • 4番:第一小臼歯
  • 5番:第二小臼歯
  • 6番:第一大臼歯
  • 7番:第二大臼歯
  • 8番:第三大臼歯(親知らず)
一般的な「奥歯」という言葉は、4番・5番の小臼歯まで含めて使われることがあります。一方、「大臼歯」は6番・7番・8番を指します。

歯の番号と奥歯の位置

特に6番と7番は、食べ物をすりつぶし、しっかり噛むために重要な役割を担っています。

なぜ奥歯は失われやすいのでしょうか

1.奥歯は虫歯になりやすい形をしています

奥歯の噛む面には、細かな溝やくぼみがあります。 食べ物をすりつぶすためには適した形ですが、その一方で、食べかすやプラークが残りやすい場所でもあります。 さらに口の奥にあるため、前歯と比較すると歯ブラシが届きにくく、磨き残しが生じやすくなります。 そのため奥歯は、虫歯の治療を繰り返すことがあります。

2.6番は子どもの頃から長期間使われています

6番の第一大臼歯は、一般に6歳頃に生えてくるため「6歳臼歯」とも呼ばれます。 永久歯の中でも比較的早い時期から使われ始め、その後何十年にもわたって、食事のたびに大きな力を受け続けます。 50代、60代になれば、すでに40〜50年以上使っていることになります。 その間に、虫歯治療、詰め物、被せ物、根管治療などを経験していることも珍しくありません。

3.奥歯には大きな噛む力がかかります

奥歯は、食べ物を噛み砕く中心的な役割を担っています。そのため、前歯と比較して大きな咬合力を受けます。 健康な歯であれば、その力に耐えられるようにできています。 しかし、大きな虫歯を治療した歯や、神経を取って歯質が少なくなった歯などでは、長年の使用によって亀裂や破折などが生じることがあります。 状態によっては保存が難しくなり、抜歯が必要になる場合があります。

4.歯周病も歯を失う原因になります

歯を失う原因は、虫歯だけではありません。 歯周病が進行すると、歯を支えている歯槽骨が失われ、歯が動くようになることがあります。 特に重要なのは、1本の歯だけを見るのではなく、お口全体の状態を見ることです。 1本の奥歯が歯周病によって保存できなくなった場合は、ほかの歯にも歯周病が進行していないか確認する必要があります。

5.治療を繰り返してきた奥歯が保存できなくなることもあります

奥歯を失うまでには、長い経過があることがあります。 たとえば、
虫歯になる ↓ 詰め物をする ↓ 再び治療する ↓ 神経の治療をする ↓ 被せ物をする ↓ 再治療が必要になる
といったように、同じ歯を何度も治療しているケースです。 治療した歯が必ず抜歯になるわけではありません。 しかし、治療を重ねることで残っている歯質が少なくなったり、歯根に問題が生じたりして、最終的に保存が難しくなることがあります。

奥歯を失っても、すぐには困らないことがあります

前歯を失えば、見た目に大きな変化が生じます。 一方、一番奥に近い歯を1本失っても、
  • まだ噛める
  • 反対側で食べられる
  • 外から見えない
などの理由から、生活上の不便をあまり感じない方もいます。
ここで大切なのは、「困っていないこと」と「何もしなくてよいこと」は同じではないということです。
たとえば、一番奥の7番を失った場合には、お口の状態によって、インプラントや部分入れ歯で補う場合もあれば、あえて歯を入れずに経過をみる場合もあります。

「経過観察」と「放置」は違います

歯を失ったからといって、必ず人工の歯を入れなければならないわけではありません。 歯科医師がお口全体を診察したうえで、補わずに経過をみることも治療選択肢の一つです。 ただし、それは「抜いたら終わり」という意味ではありません。残っている歯、噛み合わせ、歯周病、虫歯などを定期的に確認していく必要があります。 特に考えていただきたいのは、

「なぜ、その奥歯を失ったのか?」

ということです。 虫歯や歯周病などで1本の歯を失ったのであれば、同じ問題がほかの歯に起きていないかを確認することが大切です。

補綴歯科専門医・黒崎俊一の回答

奥歯を1本失ったときに考えるべきことは、「そこに何を入れるか」だけではありません。 まず、その歯を失った原因を確認し、残っている歯の状態を診ることが重要です。 そのうえで、
  • 失った歯を補う必要があるのか
  • 補うなら、どのような方法が適しているのか
  • 残っている歯を、これからどう守っていくのか
を総合的に考えます。 入れ歯治療も、単に「なくなった歯を人工の歯で埋める治療」ではありません。残っている歯をできるだけ長く使うことまで含めて治療計画を考えることが大切です。

回答した歯科医師

くろさき歯科 院長 黒崎俊一

黒崎 俊一

医療法人社団アーユス 理事長 くろさき歯科 院長

資格 日本歯科専門医機構 補綴歯科専門医 日本補綴歯科学会 専門医

入れ歯100の疑問