入れ歯の着色を防ぐ5つの方法〜専門医が教える予防と対策
入れ歯の着色とは?着色が起こる主な原因
入れ歯は毎日の食事や会話に欠かせない大切なものです。しかし、長く使用していると徐々に変色や着色が起こり、見た目や衛生面で気になる問題となります。
入れ歯の着色とは、入れ歯の表面に色素が付着して本来の色から変化してしまう現象です。新品の入れ歯は白く美しいものですが、使用していくうちに黄ばみや黒ずみが生じることがあります。
着色が起こる主な原因は以下の4つです。
①食べ物や飲み物による着色
コーヒー、紅茶、赤ワイン、カレーなどの色素を含む食べ物や飲み物は、入れ歯の表面に色素を付着させやすいです。特に毎日習慣的に摂取する場合、その影響は大きくなります。
これらの食品に含まれる色素は、入れ歯の素材の微細な凹凸に入り込み、時間の経過とともに蓄積されていきます。
②タバコのヤニによる着色
喫煙習慣がある方は、タバコのタールやニコチンが入れ歯に付着して黄色や茶色に変色することがあります。
タバコのヤニは特に頑固な着色の原因となり、通常のお手入れでは落としにくい性質があります。
③プラークや歯石の付着
入れ歯も天然の歯と同様に、適切なケアを怠るとプラークや歯石が付着します。これらが蓄積すると黒ずみや茶色の汚れとなり、見た目だけでなく口臭の原因にもなります。
④細菌やカビの繁殖
入れ歯の表面や小さな傷に細菌やカビが繁殖すると、黒ずみの原因になることがあります。特に夜間に入れ歯を外さずに使用したり、保管方法が不適切だったりすると発生しやすくなります。
どうですか?思い当たる原因はありますか?
入れ歯の着色を防ぐ5つの効果的な方法
入れ歯の着色を防ぐためには、日々のケアが非常に重要です。ここでは、歯科医師として長年の経験から効果的な5つの方法をご紹介します。
1. 毎食後の丁寧な洗浄習慣をつける
入れ歯の着色を防ぐ最も基本的な方法は、食後すぐに入れ歯を外して洗浄することです。食べ物の色素が定着する前に洗い流すことで、着色を大幅に防ぐことができます。
洗浄の際は、入れ歯専用ブラシを使用しましょう。通常の歯ブラシは硬すぎて入れ歯に傷をつける可能性があります。入れ歯専用ブラシは、入れ歯の形状に合わせて設計されており、細部まで効果的に汚れを落とすことができます。
また、洗浄の際は入れ歯を落として破損しないよう、洗面台に水を張るか、タオルを敷くなどの工夫をしましょう。
2. 適切な入れ歯洗浄剤を使用する
市販の入れ歯洗浄剤には、様々な種類があります。部分入れ歯と総入れ歯では適した洗浄剤が異なるため、自分の入れ歯のタイプに合った製品を選ぶことが大切です。
特に部分入れ歯には金属のクラスプ(バネ)があるため、金属にやさしい中性や弱アルカリ性の洗浄剤を選びましょう。酸性の洗浄剤は金属を劣化させる可能性があります。
入れ歯洗浄剤の正しい使用方法は以下の通りです:
- 入れ歯についた目立つ汚れをまず洗い落とす
- 規定量の水またはぬるま湯を用意して入れ歯を入れる
- 洗浄剤を入れ、指定された時間つけ置きする
- 取り出して流水でしっかり洗い流す
- 使用した洗浄液は毎回捨てる
洗浄剤を使用する際は、熱湯は絶対に使用せず、水かぬるま湯を使いましょう。熱湯は入れ歯を変形させる原因になります。
3. 着色しやすい飲食物の摂取後は特に注意する
コーヒー、紅茶、赤ワイン、カレーなどの着色性の高い飲食物を摂取した後は、特に丁寧な洗浄が必要です。
これらの飲食物を完全に避けることは難しいですが、摂取後すぐに入れ歯を洗浄することで、色素が定着するのを防ぐことができます。外出先で洗浄が難しい場合は、少なくともお水でゆすぐだけでも効果があります。
また、着色しやすい飲み物を摂取する際はストローを使用すると、入れ歯に直接触れる機会が減り、着色を軽減できます。
4. 就寝時は必ず入れ歯を外して適切に保管する
夜間、入れ歯を装着したままにすると、唾液の流れが減少し、細菌が繁殖しやすくなります。これが着色や口臭の原因となることがあります。
就寝時は必ず入れ歯を外し、清潔な専用容器に保管しましょう。保管の際は、入れ歯が乾燥しないよう、水や専用の洗浄液に浸けておくことが重要です。
ただし、長期間同じ水に浸けたままにすると、かえって細菌が繁殖する原因になりますので、保管用の水や洗浄液は毎日新しいものに交換してください。
5. 定期的な歯科医院でのプロフェッショナルクリーニング
家庭でのケアだけでは落としきれない頑固な着色や汚れは、歯科医院での専門的なクリーニングで除去することができます。
歯科医院では、超音波洗浄機や専用の薬剤を使用して、入れ歯の細部まで徹底的に洗浄します。特にタバコのヤニや長期間蓄積された着色は、プロのクリーニングが効果的です。
私の診療所では、入れ歯洗浄機を使用して約20分で効果的に洗浄を行っています。石や歯垢の除去だけでなく、着色も効果的に落とすことができますので、定期的なメンテナンスをお勧めしています。
定期的なクリーニングは、入れ歯の寿命を延ばし、常に清潔で快適な状態を維持するのに役立ちます。3〜6ヶ月に一度の頻度でのクリーニングをお勧めします。
入れ歯のお手入れで注意すべきポイント
入れ歯を長く美しく使い続けるためには、正しいお手入れ方法を知ることが大切です。ここでは、入れ歯のお手入れで特に注意すべきポイントをご紹介します。
熱湯での洗浄・消毒は避ける
入れ歯は熱に弱い素材でできているため、熱湯で洗浄すると変形してしまう恐れがあります。特にプラスチック部分は熱により縮んだり歪んだりする可能性があります。
洗浄には必ず常温の水かぬるま湯を使用しましょう。変形した入れ歯は口にフィットせず、不快感や痛みの原因になることがあります。
研磨剤入りの歯磨き粉は使わない
一般的な歯磨き粉には研磨剤が含まれていることが多く、これを使用すると入れ歯の表面に細かい傷がつく可能性があります。傷がついた表面は汚れが付きやすくなり、かえって着色の原因となります。
入れ歯の洗浄には、入れ歯専用の洗浄剤やフォームを使用するか、中性洗剤を薄めたものを使いましょう。
漂白剤の使用は控える
市販の漂白剤は入れ歯の素材を傷める可能性があります。特に金属部分がある部分入れ歯の場合、錆びや腐食の原因になることがあります。
着色が気になる場合は、無理に自己処理せず、歯科医院での専門的なクリーニングを受けることをお勧めします。
落下による破損に注意する
入れ歯の洗浄中に手から滑り落として破損するケースは意外と多いものです。洗浄の際は、洗面台に水を張るか、柔らかいタオルを敷くなどして、万が一落としても破損しないよう対策をしましょう。
破損した入れ歯は自己修理せず、必ず歯科医院に相談してください。不適切な修理は口腔内のトラブルの原因になることがあります。
あなたも入れ歯のお手入れで困ったことはありませんか?
入れ歯の着色が進んでしまった場合の対処法
日々のケアを怠ってしまい、入れ歯の着色が進んでしまった場合でも、諦める必要はありません。着色の程度によって、いくつかの効果的な対処法があります。
軽度の着色の場合
軽度の着色であれば、入れ歯洗浄剤の長時間浸漬(メーカー推奨時間内で)が効果的です。市販の入れ歯洗浄剤には、酵素や発泡剤が含まれており、適切に使用することで表面の軽い着色を除去できることがあります。
特に酵素系の洗浄剤は、タンパク質を分解する作用があり、食べ物の色素やプラークを効果的に除去します。使用する際は、製品の説明書に記載された時間を守りましょう。
中度から重度の着色の場合
中度から重度の着色の場合は、家庭でのケアだけでは完全に除去するのが難しいことがあります。このような場合は、歯科医院での専門的なクリーニングを受けることをお勧めします。
歯科医院では、超音波洗浄機や専用の薬剤を使用して、頑固な着色も効果的に除去することができます。特にタバコのヤニや長期間の飲食による着色は、プロの技術で対応するのが最も効果的です。
私の診療所では、入れ歯の状態に応じて20〜40分程度の専門的クリーニングを行っています。特に頑固な着色や歯石の付着がある場合は、より時間をかけて丁寧に洗浄します。
着色が著しい場合や経年劣化している場合
入れ歯を長期間使用していると、素材自体が劣化して変色することがあります。このような場合、クリーニングだけでは対応できないこともあります。
着色が著しい場合や経年劣化している場合は、入れ歯の修理や作り直しを検討する時期かもしれません。特に5〜7年以上使用している入れ歯は、素材の劣化だけでなく、口腔内の状態変化により合わなくなっていることもあります。
定期的な歯科検診で入れ歯の状態をチェックし、必要に応じて修理や新調の相談をすることをお勧めします。
入れ歯の着色防止と長持ちさせるためのまとめ
入れ歯の着色を防ぎ、長く快適に使用するためのポイントをまとめます。
日々のケアが最も重要
入れ歯の着色防止には、毎日の丁寧なケアが何よりも重要です。食後の洗浄習慣をつけ、適切な洗浄剤を使用することで、多くの着色は予防できます。
特に着色しやすい食べ物や飲み物を摂取した後は、できるだけ早く洗浄することを心がけましょう。
適切な保管方法を守る
就寝時は必ず入れ歯を外し、清潔な水や専用の洗浄液に浸けて保管しましょう。保管液は毎日新しいものに交換することが大切です。
定期的なプロのケアを受ける
家庭でのケアだけでなく、3〜6ヶ月に一度は歯科医院での専門的なクリーニングを受けることをお勧めします。プロのケアは入れ歯の寿命を延ばし、常に清潔で快適な状態を維持するのに役立ちます。
また、定期検診では入れ歯の適合状態もチェックできるため、不具合の早期発見にもつながります。
入れ歯の状態に変化を感じたら早めに相談
入れ歯の着色だけでなく、違和感や痛み、緩みなどを感じたら、早めに歯科医院に相談しましょう。早期対応が大きなトラブルを防ぎ、快適な入れ歯ライフを続けるコツです。
入れ歯は「どこで作っても同じ」ではありません。診断から製作、調整まで丁寧に行うことで、噛み心地や見た目の自然さは大きく変わります。
さいたま市南区南浦和にある「くろさき歯科」では、入れ歯専門の歯科医院として、患者様一人ひとりに合った入れ歯を提案しています。入れ歯でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
入れ歯 くろさき歯科では、入れ歯の無料相談も受け付けております。「今の入れ歯が合わない」「入れ歯を作ってみたいが何から始めたらいいのか」などのご相談に、入れ歯チームが丁寧にお答えいたします。
院長・監修医師
黒崎 俊一(kurosaki syunichi)
歯学博士/日本補綴歯科学会「専門医」
経歴・資格
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1987年(昭和62年) 日本大学歯学部 卒業
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1992年(平成4年) 日本大学大学院 歯学部 補綴専攻 修了・歯学博士取得
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1996年(平成8年) くろさき歯科 開院(当院開業)
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日本補綴歯科学会認定「専門医」/日本歯科審美学会会員/日本矯正歯科学会会員
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日本大学歯学部 兼任講師として教育にも従事