入れ歯でのろれつ・滑舌の悪化について【さいたま市浦和の歯科医師監修】
初めての入れ歯を作った時や直しをした際、最初のうちしばらくは話しづらく、ろれつが回らないと感じる方は多く、入れ歯の不具合と思うことがあるようですが、入れ歯に慣れつつ、言葉を話す練習をすることで入れ歯を入れる前と変わらない発音ができるようになります。
総入れ歯など大きな入れ歯の場合は食事時やろれつが良くなるまで数ヶ月の期間を要します。入れ歯がご自身の身体の一部となり違和感なく過ごせるようになるには、一般的には2か月程度といわれていますが、これには個人差がかなりあります。
部分入れ歯で、それまで問題なく使用していたのに、急に滑舌が悪くなった場合は「金属が摩耗している」可能性があります。
金属のばねのついた部分入れ歯は、金属疲労による摩耗やゆがみが多く見受けられます。
部分入れ歯をご自身の歯にひっかけているばねという金具部分が、長期使用による噛み合わせの力や、脱着の際の微動を繰り返し金属部分に疲労が溜まり突然折れてしまうこともあります。
定期的な歯科医院によるメンテナンスを受けることで、金属疲労の度合いなどもチェックができますので、面倒がらずに受診することが大切です。
患者様でろれつが回らないと、くろさき歯科に受診された方のお話です。現在は上の入れ歯は金属床、下はプラスチック+金属という状況です。
長く差し歯で過ごされてきましたが歯茎周りに炎症も見られ自費での入れ歯を作成することになりました。
保険適用の入れ歯を使用されていた際のお話です。
「自分ではそこまで年を取っていないと思っていたのに、入れ歯になってしまったというだけで精神的に落ち込み何にも意欲が持てない状態でした。」「固い物は噛めないから、年寄りみたいにやわらかい物しか選んで食べないし、楽しみだった友人との食事すら、するのがいやになってしまいました。入れ歯を付けた状態で話をしようとすると、口の中で引っかかるような、ろれつが回らないような、さしすせそが非常に言いにくいです。入れ歯ということで口元を隠して話すようになったり、自信がないから声も小さくなって、ちゃんと話せなくなってみんなに言われるのが嫌で、人と会うことを避けるようになっていきました。今まで楽しめていたことが楽しめないって、どん底まで落ち込んでました。」
診療させていただいた所、入れ歯自体に厚みもあり、空気を抜いて発音する音は発音しにくいとすぐに理解できました。
前歯部を金属で支える形状の「金属床」の入れ歯を提案させていただきました。説明とカウンセリングを行い納得されたうえで制作開始となりました。これだけでも発音については問題なく改善されると思います。
「最初の感想は入れ歯じゃないみたい!ブリッジのようにしっかりと安定しているのに苦しい感じが全くなく、本当に違和感がないです。ああ、ちゃんとあっている入れ歯だったら、あんなに落ち込むこともなかったんだ、そしてこれからはもう大丈夫なんだ、と思ったら気持ちがすごく楽になりました。」
「入れ歯を付けているということを忘れてしまうほど、入れている感じがしないですね。かみ合わせも先生のお話を受けたり体の癖を自分でも意識してみたら、自然にぴったりと上下の歯が合わさるんですよ。入れ歯なのに入れ歯じゃない感じ。今までの保険の入れ歯はなんだったんだろうと思う。入れ歯のろれつの悪いことで悩んでいる方には自分の人生への投資だと思って、自費できちんとした物を作ってくれる歯医者さんにかかった方がいいと教えてあげたいです。
絶望的な思いでしたが先生方には本当に救われました。ありがとうございました。」
この患者様は現在は2か月に1回の定期健診とメンテナンスをされており、非常に快適に使えていると、毎回うれしい報告をしてくださいます。
噛める楽しさ、見た目の美しさ、しゃべりやすさ。どれをとっても女性には捨てられないものですよね。入れ歯が邪魔をするのではなく、入れ歯があなたのよきパートナーとなり、それまで以上に人生を謳歌できることを願っております。
入れ歯自体は5年から10年位、きちんとメンテナンスとケアを行っていれば問題なく使用することが可能です。素材の劣化や、ご自身のお口の中の環境が変わった場合(急激に痩せた・太った、歯を失った)は、改めて作り直しが必要になる場合もあります。
しばらく歯医者に行っていないな、という方は、特に問題なくても一度歯科医院への受診をお勧めいたします。
まれに、神経疾患や、脳障害によって脳や神経に障害がある場合に、舌がもつれたり言葉が不明瞭になることがあります。普段とは違うと感じる、ろれつが回らない場合は自己診断せずに救急で病院に受診し医師の指示を仰ぎましょう。