入れ歯の咀嚼力はどのくらい?

最近、食べ物を歯で噛むこと=咀嚼(そしゃく)が健康に大きく影響を及ぼすという考え方に注目が集まっています。
確かに咀嚼力は健康指標の一つであり、しっかりと咀嚼することは飲み込む時の障害を予防したり、消化を助けたりすることにもつながります。
口をよく動かすことは口の中の自浄作用を高めることにもなりますし、老化防止にもなると言われていますね。
物を良く噛んで食べる子は脳が発達するなどとも言われます。

この咀嚼力ですが、入れ歯にすることである程度低下してしまうことは事実です。
うまく使いこなせるようになれば食事で不自由を感じることも少なくなりますが、すべて自前の歯で噛み締めた時と、総入れ歯で噛み締めた時では大きく差が出ることは否めません。
もともと噛む力には個人差もありますし一概には言えませんが、入れ歯によって噛む力が下がったとしても、何より大事なのはちゃんと食べ物を問題なく食べられるかどうかという点です。
単に噛み締める力が下がったと言って落胆するのは誤りで、食べたいものを食べる、噛みたいものをちゃんと噛むという、本来の咀嚼力に注目しましょう。

当院では、患者さんが最終的に食べられるようになりたい食品をしっかり食べていただくことを目標としています。
それには「山本式咀嚼機能診査表」というものを使って食品群の中から食べられるようになったものをチェックする方法を取っているのですが、何度も入れ歯の調整を行い、患者さんが入れ歯の使い方をマスターして、今まで食べられなかったものが食べられるようになる過程を追うのは、患者さんにとっても我々治療する側にとってもとても嬉しいステップです。
食べたいものをしっかり食べる力をキープするというのが、一番大切なことではないでしょうか。
それ以上に強く食いしばる力に固執しても、あまり建設的ではないように思います。

適切な咀嚼力を生むためには、噛み合わせがとても重要です。
噛み合わせがしっかりと安定している人は身体の重心も安定するので、歩く姿勢もきちんとすると言われています。
当院で入れ歯を変えた人が、頼りにしていた杖を離してしっかり歩けるようになったり、底力が出るようになったりするのはすべて噛み合わせの影響だと言っていいでしょう。
入れ歯を適切にすることが、重心を安定させて全身の痛みを軽減し、美味しくしっかり食事が出来る健康的な生活をもたらすことは、数多くの事例が現していることなのです。