奥歯を1本失ったときの影響とは?部分入れ歯の選び方と治療のポイント

奥歯を1本失ったままにすると起こる影響
「奥歯を1本失ったけれど、見た目に影響がないから大丈夫」と考えていませんか?
実は、奥歯を失ったまま放置することは、お口全体のバランスを崩す原因となります。奥歯は噛む力の約60%を担う重要な役割を持っており、1本失うだけで咀嚼能力が約40%も低下するといわれています。
奥歯がない状態を放置すると、隣の歯が空いたスペースに傾いたり、噛み合っていた対合歯(上下で噛み合う相手の歯)が伸びてきたりします。これにより、歯並びや噛み合わせが乱れ、残っている歯への負担が増加してしまうのです。
さらに、噛み合わせの崩れは顎関節症、肩こり、頭痛といった全身症状につながることもあります。食べ物を十分に噛み砕けなくなることで、消化器官への負担も増え、栄養の吸収にも影響が出る可能性があります。
部分入れ歯が必要な理由と早期治療の重要性
奥歯を失った場合、部分入れ歯は失った機能を補う効果的な治療方法の一つです。
部分入れ歯を装着することで、噛む力のバランスを維持し、他の歯への過度な負担を軽減できます。また、空いたスペースを埋めることで、歯並びや噛み合わせの乱れを防ぐことができるのです。
放置することで起こる具体的なリスク
歯を失ったまま放置すると、以下のような問題が生じる可能性があります。
- 隣接する歯の移動:空いたスペースに向かって歯が傾き、歯並びが悪化します
- 対合歯の挺出(ていしゅつ):噛み合う相手がいない歯が伸び出してきます
- 咀嚼機能の低下:食べ物を十分に噛み砕けず、消化不良の原因になります
- 歯周病リスクの増加:歯が移動することで清掃が困難になり、歯周病が進行しやすくなります
- 顎関節への影響:噛み合わせの乱れが顎関節症を引き起こすことがあります
特に、対合歯が伸び出してくると、歯を支えている骨や歯ぐきから飛び出してくることになり、歯ブラシがかけにくくなります。その結果、虫歯や歯周病に対して弱くなり、最終的には抜歯が必要になることもあるのです。
早期治療がもたらすメリット
歯を失った後、できるだけ早く治療を開始することで、以下のようなメリットが得られます。
まず、歯並びや噛み合わせの変化が進む前に対処できるため、治療の難易度が低く抑えられます。また、残っている歯の健康を守り、将来的な歯の喪失を防ぐことができます。さらに、咀嚼機能を早期に回復することで、食事の質や栄養状態を維持できるのです。

知らないと損する部分入れ歯の最新情報と選択基準
部分入れ歯に関する最新の知識や、選び方の基準をわかりやすく解説します。素材・安定性・費用など、重要なポイントを押さえたい方におすすめの記事です。
部分入れ歯の種類と費用相場

部分入れ歯には、保険適用のものと自費診療のものがあり、それぞれに特徴があります。
選択肢が多いからこそ、ご自身の生活スタイルや希望に合わせて最適なものを選ぶことが大切です。
保険適用の部分入れ歯(レジン床義歯)
保険適用の部分入れ歯は、プラスチック製で金属のバネ(クラスプ)がつくタイプです。
奥歯1本の場合、費用は約5,000円〜8,000円(3割負担)、2本の場合は約8,000円〜12,000円、3〜4本の場合は約10,000円〜15,000円程度が目安となります。製作期間は2週間〜1ヶ月程度で、修理が容易という利点があります。
ただし、厚みがあるため違和感を感じやすく、噛む力は天然歯の30%程度にとどまります。また、金属のバネが目立つことがあるため、見た目を気にされる方には向かない場合があります。
自費診療の部分入れ歯
自費診療では、さまざまな素材や設計から選ぶことができます。
ノンクラスプデンチャー(88,000円〜)は、金属のバネがなく、歯茎の色に馴染む樹脂製です。笑ったときにも目立ちにくく、審美性を重視される方に人気があります。
金属床義歯(330,000円〜)は、床部分に金属を使用し、保険の入れ歯の約3分の1の薄さで作製可能です。熱伝導性に優れているため、食べ物の温度を感じられ、食事が美味しく感じられます。強度も高く破損しにくいため、長期間の使用に適しています。
シリコン義歯(220,000円〜)は、入れ歯の内面にシリコンを使用し、クッション効果で痛みを軽減します。入れ歯が当たって痛いという方に最適で、無味無臭で撥水性に優れています。
磁性アタッチメント義歯(88,000円〜)は、強力な磁石で固定しパチンと留まり外れにくいのが特徴です。バネがなく審美的で、噛む力も保険の入れ歯より向上します。
くろさき歯科における部分入れ歯治療の特徴
当院では、30年以上の入れ歯治療経験を持つ歯科医師が、一人ひとりに最適な入れ歯をご提案しています。
50種類以上の入れ歯設計パターンの中から、素材・構造・噛み合わせを最適化することで、「痛くない」「外れない」「よく噛める」入れ歯を実現しています。
2段階方式による精密な入れ歯製作

当院では、いきなり本入れ歯を作りません。
まずは「治療用入れ歯」で噛み合わせや口の筋肉バランスを整え、その後、本入れ歯を作製する2段階方式を採用しています。この工程を踏むことで、入れ歯安定剤に頼らずにピタッと合う入れ歯を実現しています。
治療用入れ歯の段階で、お口の機能をしっかり整えることが、快適な本入れ歯を作る鍵となります。「話しやすい」「食べやすい」「外れにくい」と喜ばれる理由がここにあるのです。
信頼できる技工士との連携
入れ歯の完成度は、技工士の技術に大きく左右されます。
当院では、20年以上信頼を寄せる熟練の歯科技工士と連携し、噛み合わせや見た目にこだわった入れ歯を丁寧に仕上げています。「装着してすぐになじむ」「食事中にズレない」と多くの患者さまから評価をいただいています。
歯科医師によるチーム医療
当院には、虫歯・歯周病・矯正・入れ歯など、各分野の歯科医師がそろっています。
入れ歯治療では、「どの歯を残すか」「どこに支えを置くか」が重要です。歯周病治療・根管治療の経験が豊富な歯科医師も在籍しているため、他院に通うことなく、すべての治療を院内で完結できます。歯を抜く前の診断から、残すための治療、噛み合わせ調整まで、チームでサポートいたします。
部分入れ歯と他の治療法の比較
奥歯を失った場合、部分入れ歯以外にもブリッジやインプラントという選択肢があります。
それぞれにメリットとデメリットがあるため、ご自身の状況に合わせて選択することが大切です。
ブリッジによる治療
ブリッジは、失った歯の両隣の歯を削り、連結した被せ物で補う固定式の治療法です。
違和感が少なく見た目も自然ですが、両隣の健康な歯を大きく削る必要があります。削った歯の寿命が短くなる可能性があり、ブリッジ下部分の清掃が難しく虫歯のリスクも高まります。特に、奥歯1本のためだけに健康な歯を削ることは、長期的に見ると残存歯への負担が大きいといえます。
インプラントによる治療
インプラントは、人工歯根を顎の骨に埋め込む治療法です。
噛む力が天然歯の80〜90%と非常に高く、見た目も天然歯と同等、耐久性も15〜20年以上です。他の歯を削る必要がなく、独立した治療が可能なため、残存歯を守ることができます。
ただし、外科手術が必要で、治療期間も3〜6ヶ月と長くなります。また、自費診療となるため費用が高額になることや、骨の状態によっては治療が難しい場合もあります。
部分入れ歯のメリット
部分入れ歯は、外科手術が不要で、治療期間が短い(2週間〜1ヶ月)という利点があります。
保険適用であれば費用を抑えられ、取り外して清掃できるため衛生的です。また、幅広い症例に対応可能で、骨の状態に関わらず治療できます。ただし、装着時に違和感があることや、噛む力は天然歯より弱いこと、毎日のお手入れが必要なことは理解しておく必要があります。
部分入れ歯を長持ちさせるためのポイント

部分入れ歯を快適に長く使い続けるためには、適切なケアとメンテナンスが欠かせません。
毎日のお手入れ方法
食後は必ず入れ歯を外して、流水で食べかすを洗い流しましょう。
専用のブラシを使って、入れ歯の表面や金具部分を丁寧に磨きます。このとき、歯磨き粉は使用しないでください。研磨剤が入れ歯を傷つけ、汚れが付きやすくなる原因となります。
就寝前には、入れ歯洗浄剤を使用して除菌・脱臭・漂白を行います。酵素を含む洗浄剤は、タンパク質を分解する力があり、食べかすや歯石を効果的に除去できます。過酸化水素を含む洗浄剤は、発泡により汚れを効率よく落とし、洗浄時間を短縮できます。
定期的な調整の重要性
入れ歯は使用しているうちに、お口の状態に合わせて調整が必要になります。
当院では、修理・再調整・リフォーム対応が可能です。修理期間中も代替の入れ歯(スペア義歯)を使用できるため、「入れ歯がない期間」がなく、安心してお過ごしいただけます。
定期的に歯科医院でチェックを受けることで、入れ歯の状態を良好に保ち、お口の健康を守ることができます。適切に使用・管理された入れ歯は、死亡リスクの低下にも関連することが研究で示されています。
残存歯を守るための配慮
部分入れ歯の金具がかかる歯は、汚れが溜まりやすく、通常よりも丁寧なケアが必要です。
入れ歯を外した後は、残っている歯も丁寧に磨きましょう。特に金具がかかる部分は、歯間ブラシやフロスを使って清掃します。入れ歯を小さくしすぎると、支える歯への負担が増え、将来的な歯の損失リスクが高まります。そのため、適切な大きさと設計の入れ歯を使用することが、残存歯を守るために重要なのです。
まとめ:快適な入れ歯で健康な生活を取り戻しましょう
奥歯を1本失っただけでも、お口全体のバランスに大きな影響を与えます。
放置すると、歯並びや噛み合わせの乱れ、残存歯への負担増加、全身の健康への影響など、さまざまな問題が生じる可能性があります。早期に適切な治療を受けることで、これらのリスクを回避し、快適な食生活と健康を維持できます。
部分入れ歯は、保険適用から自費診療まで、さまざまな選択肢があります。ご自身の生活スタイルや希望に合わせて、最適なものを選ぶことが大切です。当院では、30年以上の経験を持つ歯科医師が、50種類以上の入れ歯設計パターンの中から、あなたにぴったり合う入れ歯をご提案いたします。
入れ歯は「噛むための道具」ではなく、「人生を楽しむための一部」です。食事をおいしく味わい、自然に笑える――そんな幸せを取り戻すための治療を、私たちがサポートいたします。
入れ歯でお悩みの方、奥歯を失ってどうすればよいか迷っている方は、ぜひ一度当院までご相談ください。カウンセラーが不安や疑問に丁寧に対応し、一人ひとりのペースに合わせて治療を進めてまいります。
くろさき歯科で、あなたの笑顔と健康を取り戻しませんか?
院長・監修医師
黒崎 俊一(kurosaki syunichi)

歯学博士/日本補綴歯科学会「専門医」
経歴・資格
-
1987年(昭和62年) 日本大学歯学部 卒業
-
1992年(平成4年) 日本大学大学院 歯学部 補綴専攻 修了・歯学博士取得
-
1996年(平成8年) くろさき歯科 開院(当院開業)
-
日本補綴歯科学会認定「専門医」/日本歯科審美学会会員/日本矯正歯科学会会員
-
日本大学歯学部 兼任講師として教育にも従事







