入れ歯と差し歯はどう違う?治療が必要になるケース別の選び方を歯科医が解説

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「入れ歯と差し歯って、何が違うの?」

歯科治療の選択肢を調べていると、こんな疑問を持つ方は少なくありません。どちらも「失った歯を補う治療」というイメージがありますが、実は治療の仕組みや適応条件が大きく異なります。

30年以上にわたり補綴治療に携わってきた経験から申し上げると、入れ歯と差し歯の違いを正しく理解することは、ご自身に最適な治療法を選ぶための第一歩です。

この記事では、入れ歯と差し歯の違いを分かりやすく解説し、それぞれの治療が適しているケースや選び方のポイントをお伝えします。

入れ歯の基礎知識〜選ぶ前に知っておきたいこと

入れ歯について基本的な仕組みや種類、選ぶときに知っておきたいポイントをわかりやすく解説します。初めての方でも安心して選べる内容です。


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入れ歯と差し歯の根本的な違いとは

入れ歯と差し歯の最も大きな違いは、「歯の根っこ(歯根)が残っているかどうか」です。

差し歯は、歯根が残っている状態で、その根を土台として人工の歯を被せる治療法です。「クラウン」や「被せ物」と呼ばれ、固定式のため取り外しはできません。

一方、入れ歯は歯を完全に失った場合に使用する取り外し可能な装置です。「義歯」とも呼ばれ、1本から全ての歯まで、失った本数に応じて「部分入れ歯」または「総入れ歯」を選択します。

つまり、歯根があれば差し歯、歯根がなければ入れ歯やその他の治療法(ブリッジ、インプラント)を検討することになります。

差し歯治療の基本的な仕組み

差し歯治療では、残った歯根に土台(コア)を作り、その上に歯の形をした被せ物を装着します。

治療の流れは以下の通りです・・・

  • 歯の神経を取り除く根管治療を行う(必要な場合)
  • 歯根に土台を構築する
  • 被せ物の型取りをする
  • 完成した差し歯を接着剤で固定する

差し歯ができる条件として、健康な歯根が残っていること、歯根に十分な長さと強度があること、重度の歯周病にかかっていないこと、歯根が割れていないことが挙げられます。

入れ歯治療の基本的な仕組み

入れ歯は、失った歯とその周囲の歯ぐきや粘膜を補うための人工装置です。

部分入れ歯の場合、残っている歯にバネ(クラスプ)を引っ掛けて固定します。総入れ歯の場合は、歯茎全体を覆う形で装着し、吸着力によって安定させます。

保険適用の入れ歯は医療用プラスチックで作られますが、自費診療では金属床義歯やノンクラスプデンチャー、シリコン義歯など、50種類以上の設計パターンから選ぶことができます。

差し歯が適しているケースと治療の特徴

差し歯治療は、歯根が健康に残っている方に最適な選択肢です。

特に以下のようなケースでは、差し歯治療をおすすめします・・・

  • 虫歯が大きく進行し、歯の頭の部分(歯冠)が大きく失われた
  • 事故やケガで歯が折れてしまった
  • 神経を取る治療(根管治療)を受けた歯を補強したい
  • 固定式の治療を希望している
  • 審美性を重視したい(特に前歯)

差し歯のメリット

差し歯治療には、いくつかの大きなメリットがあります。

まず、自分の歯根を活かして修復できるため、天然の歯に近い感覚で使用できます。固定式なので取り外しの手間がなく、違和感も少ないのが特徴です。

保険適用の場合、1本あたり3,000円〜10,000円程度と比較的低コストで治療が可能です。自費診療でセラミックやジルコニアを選択すれば、天然歯と見分けがつかないほど自然な仕上がりになります。

外科手術を必要としないため、治療期間も比較的短く、2〜4週間程度で完了することが多いです。

差し歯のデメリットと注意点

差し歯治療にも、いくつか注意すべき点があります。

保険適用の硬質レジン(プラスチック)は、2〜3年で変色が始まることがあります。また、歯根に負担がかかるため、適切なケアを怠ると歯根が割れるリスクもあります。

差し歯の寿命は、保険適用で約7〜10年、自費診療のセラミックで約10〜20年とされていますが、これは適切なメンテナンスを行った場合の目安です。

歯周病が進行していたり、歯根が著しく短い場合は、差し歯治療ができないこともあります。

入れ歯が適しているケースと治療の特徴

入れ歯治療は、歯根が残っていない方や複数の歯を失った方に適した選択肢です。

以下のようなケースでは、入れ歯治療を検討することになります・・・

  • 歯を完全に失ってしまった(歯根も含めて)
  • 複数の歯を同時に失った
  • 外科手術を避けたい
  • 費用を抑えたい(保険適用を希望)
  • 清掃性を重視する(取り外して洗える)

入れ歯のメリット

入れ歯治療の最大のメリットは、1本から全ての歯まで幅広く対応できる点です。

取り外しができるため、清掃やメンテナンスがしやすく、衛生的に保つことができます。外科的な手術が不要なため、高齢の方や特定の疾患を持つ方でも安心して治療を受けられます。

保険適用の場合、部分入れ歯で5,000円〜13,000円、総入れ歯で10,000円〜15,000円程度と、経済的な負担も比較的少なく済みます。

当院では、50種類以上の入れ歯設計パターンの中から、お一人おひとりのお口の状態やご希望に合わせて最適な方法をご提案しています。

入れ歯のデメリットと改善方法

保険適用の部分入れ歯では、金属のバネが見えることがあります。また、総入れ歯の場合、床の部分に厚みがあるため、食事の味や温度を感じにくいことがあります。

天然の歯と比べると噛む力が弱くなり、硬い食べ物が食べにくくなることもあります。入れ歯が合わない場合は作り直しが必要になるため、定期的な調整が欠かせません。

ただし、これらの課題は自費診療の入れ歯で大きく改善できます。ノンクラスプデンチャーなら金属のバネが見えず、金属床義歯なら薄く違和感が少なく、食事の温度も感じやすくなります。

当院では、まず「治療用入れ歯」で噛み合わせや口の筋肉バランスを整えてから本入れ歯を作製する2段階方式を採用しており、入れ歯安定剤に頼らずにぴったりフィットする入れ歯を実現しています。

入れ歯・差し歯以外の選択肢も知っておく

歯を失った場合の治療法は、入れ歯と差し歯だけではありません。

ブリッジやインプラントという選択肢もあり、それぞれに特徴があります。

ブリッジ治療の特徴

ブリッジは、失った歯の両隣にある歯を削り、橋のように連結した被せ物を装着する治療法です。

固定式で安定性が高く、違和感が少ないのがメリットです。治療期間も2〜4週間程度と短く、保険適用も可能です。

ただし、健康な両隣の歯を削る必要があるため、土台となる歯に負担がかかります。また、清掃が難しく虫歯リスクがあることも注意点です。

インプラント治療の特徴

インプラントは、失った歯の部分に人工歯根を埋め込み、その上に人工の歯を装着する治療法です。

天然歯とほぼ同等の噛む力を実現でき、見た目も非常に自然です。周囲の健康な歯を削る必要がなく、長期的に使用できる可能性があります。

ただし、基本的に保険適用外のため費用が高額になります。また、外科手術が必要で、治療期間も数ヶ月かかることがあります。

あごの骨が十分にあること、全身の健康状態が良好であることが条件となります。

どの治療法を選ぶべきか

治療法の選択は、お口の状態、ご予算、ご希望によって異なります。

当院では、虫歯・歯周病・矯正・入れ歯のすべての分野に臨床経験の多い歯科医師が在籍しており、チーム医療で「どの歯を残すか」「どこに支えを置くか」を総合的に診断します。

歯を抜く前の診断から、残すための治療、噛み合わせ調整まで、すべて院内で完結できる体制を整えていますので、何度も別の歯科に通う必要がありません。

治療を選ぶ際に大切にしたいポイント

入れ歯と差し歯、どちらを選ぶべきか迷ったときは、以下のポイントを考えてみてください。

お口の状態を正確に把握する

まず、歯根が残っているかどうかが最も重要な判断基準です。

歯根が健康に残っていれば差し歯治療が可能ですが、歯根がない場合は入れ歯、ブリッジ、インプラントのいずれかを選択することになります。

歯周病の進行度合いや、残っている歯の本数、噛み合わせの状態なども、治療法の選択に影響します。

ご自身のライフスタイルと希望を考える

固定式の治療を希望するか、取り外し式でも構わないか。審美性を重視するか、機能性を優先するか。費用はどの程度まで考えられるか。

これらのご希望を明確にすることで、最適な治療法が見えてきます。

当院では、カウンセラーが治療中の不安や疑問点をサポートし、初めての入れ歯でも安心して治療を進められるよう、お一人おひとりのペースに合わせて丁寧にご説明しています。

長期的な視点で考える

治療法を選ぶ際は、目先の費用だけでなく、長期的な視点も大切です。

差し歯の寿命は適切なケアで10〜20年、入れ歯は定期的な調整や作り直しが必要ですが、5〜10年使用できます。

当院では、入れ歯を落としたり顎の形が変わったりしても、修理・再調整・リフォーム対応が可能です。修理期間中も代替の入れ歯(スペア義歯)を使用できるため、「入れ歯がない期間」がなく、安心してお過ごしいただけます。

噛み合わせと全身の健康も視野に入れる

噛み合わせは、全身のバランスに深く関わっています。

当院では、治療前後に姿勢撮影を行い、入れ歯や差し歯による体のバランス改善を「見える化」しています。肩こりや腰痛、頭痛などの改善を実感される方もいらっしゃいます。

また、国家資格を持つ管理栄養士・公認心理士・整体師がチームで連携し、「食べる・動く・眠る」をトータルで支えることで、お口の健康だけでなく全身の健康づくりをサポートしています。

まとめ:あなたに最適な治療法を見つけるために

入れ歯と差し歯の違いは、「歯根が残っているかどうか」が最大のポイントです。

差し歯は歯根を活かして固定式の歯を作る治療法で、入れ歯は歯を完全に失った場合に使用する取り外し可能な装置です。それぞれにメリット・デメリットがあり、お口の状態やご希望によって最適な選択肢は異なります。

大切なのは、ご自身のお口の状態を正確に把握し、ライフスタイルや希望に合った治療法を選ぶことです。

入れ歯は「噛むための道具」ではなく、「人生を楽しむための一部」です。30年以上入れ歯治療に携わってきた経験と技術で、痛みがなく、見た目も自然で、しっかり噛める入れ歯をご提供します。

埼玉だけでなく、遠方からお越しになる方にも「くろさき歯科にして良かった」と思っていただける治療を目指しています。

「入れ歯が痛くて使えない」「外れやすくて人と話すのが不安」「見た目が気になって笑えない」

そんなお悩みを抱えている方は、ぜひ一度ご相談ください。南浦和駅からすぐの「くろさき歯科」では、あなたにぴったり合う快適な入れ歯づくりをサポートします。カウンセラーによる丁寧なカウンセリングで、不安や疑問にお答えしながら、最適な治療法をご提案いたします。

院長・監修医師

黒崎 俊一(kurosaki syunichi)

歯学博士/日本補綴歯科学会「専門医」

経歴・資格

  • 1987年(昭和62年) 日本大学歯学部 卒業

  • 1992年(平成4年) 日本大学大学院 歯学部 補綴専攻 修了・歯学博士取得

  • 1996年(平成8年) くろさき歯科 開院(当院開業)

  • 日本補綴歯科学会認定「専門医」/日本歯科審美学会会員/日本矯正歯科学会会員

  • 日本大学歯学部 兼任講師として教育にも従事