部分入れ歯は保険適用が最適とは限らない理由
部分入れ歯の選択に迷われていませんか?
歯を失ってしまった時、多くの患者さんが最初に考えるのは「保険適用の部分入れ歯」ではないでしょうか。確かに経済的な負担は少なく済みますが、それが本当にベストな選択なのでしょうか。
実は、部分入れ歯の専門書でさえ「条件が許すならインプラントかブリッジの方が良い」と記載されているのです。保険適用の部分入れ歯には、見た目や機能面で様々な制約があります。
私は日本大学歯学部卒業後、補綴専攻の大学院を修了し、日本補綴学会認定専門医として30年以上にわたり多くの患者さんの入れ歯治療に携わってきました。その経験から言えることは、部分入れ歯の選択は単に「安いから」という理由だけで決めるべきではないということです。
保険適用の部分入れ歯のメリットとデメリット
まずは保険適用の部分入れ歯について、そのメリットとデメリットを詳しく見ていきましょう。
保険適用の部分入れ歯の最大のメリットは何といっても「費用の安さ」です。3割負担の場合、一般的に5,000円〜15,000円程度で作製することができます。また、全国どこの歯科医院でも同じルールで対応可能なため、引っ越しや転院の際にも安心です。
さらに、治療期間が比較的短いのも魅力です。型取りから完成までがスムーズで、「早く噛めるようになりたい」という方には心強い選択肢となります。
しかし、デメリットも見逃せません。保険適用の部分入れ歯は、使用できる素材が限られています。主にレジン(プラスチック)と金属のバネ(クラスプ)で構成されるため、以下のような問題が生じやすいのです。
- 見た目の問題:金属のバネが目立ち、笑った時や会話中に見えてしまいます
- 噛む力の弱さ:固い食べ物が噛みにくく、食事の満足度が下がります
- 装着感の違和感:プラスチック部分が厚く、口の中がモコモコする感覚があります
- 周囲の歯への悪影響:バネがかかる歯の寿命が短くなるリスクがあります
実は、部分入れ歯の専門書「Stewart’s clinical removable partial prosthodontics」には、「歯を失った場合の治療の第一選択はインプラントないしブリッジである」と明記されています。これは部分入れ歯の専門書でありながら、条件が許すならば他の選択肢を推奨しているのです。
自費診療の部分入れ歯という選択肢
保険適用の部分入れ歯に満足できない場合、自費診療の部分入れ歯という選択肢があります。確かに費用は高くなりますが、その分だけ品質や快適性が格段に向上します。
自費診療の部分入れ歯には、いくつかの種類があります。それぞれの特徴を見てみましょう。
金属床義歯
金属床義歯は、入れ歯の土台部分に金属を使用しているため、保険適用の入れ歯と比べて約3分の1の薄さで作ることができます。薄いため違和感が少なく、会話や食事がしやすいのが特徴です。
また、熱が伝わりやすいため、食べ物の温度を感じやすく、味わいも損なわれにくいというメリットもあります。費用は30万円〜60万円前後が相場です。
ノンクラスプデンチャー
ノンクラスプデンチャーは、金属のバネを使わずに特殊な樹脂で固定する入れ歯です。金属が見えないため審美性に優れており、人前で笑うことに抵抗がある方に特におすすめです。
歯茎に当たる部分や留め具には特殊な樹脂が使われており、柔らかく軽量でフィット感が高いのが特徴です。費用は10万円〜50万円前後が相場となります。
ただし、金属製の入れ歯に比べると強度は劣るため、使用状況によっては頻繁な修理が必要になる可能性があります。
コンフォート義歯
コンフォート義歯は、歯茎に当たる部分に柔らかいシリコーン素材を使用した入れ歯です。このシリコーン素材のおかげで、噛んでも痛みが出にくく、入れ歯が歯茎に吸着しやすくなっています。
外れにくく違和感が少ないという特徴がありますが、シリコーン素材は汚れが付きやすいため、こまめな手入れが必要です。費用は10万円〜55万円前後が相場です。
インプラントとブリッジという選択肢
部分入れ歯以外の選択肢として、インプラントとブリッジがあります。これらは部分入れ歯とは異なる特徴を持っています。
インプラント
インプラントは、チタン製の人工歯根を顎の骨に埋め込み、その上に人工の歯を装着する治療法です。自分の歯と同じように使用でき、見た目も自然です。
最大のメリットは、自分の歯のような感覚で食事ができることと、周囲の健康な歯に負担をかけないことです。また、骨の吸収を防ぐ効果もあります。
ただし、手術が必要なことや、費用が高額(1本あたり30万円〜50万円程度)であることがデメリットとして挙げられます。また、全身疾患や骨の状態によっては適応できない場合もあります。
ブリッジ
ブリッジは、失った歯の両隣の歯を削り、その上から連結した人工歯をかぶせる治療法です。自分の歯のような感覚で噛むことができ、見た目も自然です。
入れ歯のように取り外す必要がないため、装着感に優れており、保険適用も可能です(材料によっては自費診療となります)。
しかし、健康な歯を削る必要があることや、支える歯に負担がかかることがデメリットです。また、ブリッジで補える範囲には限りがあり、広範囲の歯が失われている場合には適応できません。
どうですか?部分入れ歯一択だと思っていた方も、他の選択肢があることがお分かりいただけたのではないでしょうか。
患者さんに最適な選択をするためのポイント
では、これらの選択肢の中から、どのように自分に合った治療法を選べばよいのでしょうか。以下のポイントを考慮することをお勧めします。
口腔内の状態
失った歯の本数や位置、残っている歯の状態、骨の量などによって、適応できる治療法が変わってきます。例えば、広範囲の歯が失われている場合はブリッジでは対応できませんし、骨の量が少ない場合はインプラントが難しい場合があります。
まずは歯科医院で詳しく検査を受け、ご自身の口腔内の状態を正確に把握することが大切です。
生活スタイルと優先事項
ご自身の生活スタイルや何を重視するかによっても、最適な選択は変わってきます。
- 見た目を重視する方:ノンクラスプデンチャーやインプラントがおすすめ
- 噛む力を重視する方:インプラントや金属床義歯がおすすめ
- メンテナンスの手軽さを重視する方:インプラントやブリッジがおすすめ
- 費用を重視する方:保険適用の部分入れ歯やブリッジがおすすめ
何を最も重視するかを明確にすることで、選択肢を絞り込むことができます。
長期的な視点
治療法を選ぶ際には、初期費用だけでなく、長期的な視点も大切です。例えば、保険適用の部分入れ歯は初期費用は安いですが、バネがかかる歯の寿命が短くなるリスクがあり、将来的に追加の治療が必要になる可能性があります。
一方、インプラントは初期費用は高いですが、適切にケアすれば長期間使用でき、周囲の歯への悪影響も少ないため、トータルコストでは必ずしも高くならない場合もあります。
短期的な負担と長期的なメリット・デメリットのバランスを考慮することが重要です。
まとめ:あなたに最適な選択を
部分入れ歯は保険適用が最適とは限りません。保険適用の部分入れ歯は確かに経済的ですが、見た目や機能面では制約があります。自費診療の部分入れ歯やインプラント、ブリッジなど、他の選択肢も検討する価値があります。
最適な治療法は、口腔内の状態、生活スタイル、優先事項、長期的な視点など、様々な要素を総合的に考慮して決める必要があります。
くろさき歯科では、患者さん一人ひとりの状態やご希望に合わせた最適な治療法をご提案しています。「第三世代の歯科治療®」という総合的なアプローチで、単に歯を補うだけでなく、お口全体の健康と機能の回復を目指しています。
入れ歯やインプラントについてお悩みの方は、ぜひ一度無料相談にお越しください。専門医が親身になってお話を伺い、あなたに最適な治療法をご提案いたします。
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詳しくはくろさき歯科のホームページをご覧ください。さいたま市南浦和駅東口から徒歩1分、各分野の専門医が在籍する歯科医院です。
院長・監修医師
黒崎 俊一(kurosaki syunichi)
歯学博士/日本補綴歯科学会「専門医」
経歴・資格
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1987年(昭和62年) 日本大学歯学部 卒業
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1992年(平成4年) 日本大学大学院 歯学部 補綴専攻 修了・歯学博士取得
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1996年(平成8年) くろさき歯科 開院(当院開業)
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日本補綴歯科学会認定「専門医」/日本歯科審美学会会員/日本矯正歯科学会会員
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日本大学歯学部 兼任講師として教育にも従事