部分入れ歯は1本だけでも可能?種類と費用を徹底解説

部分入れ歯は1本だけでも可能なの?

「部分入れ歯って1本だけでも入れられるのかな?」

歯を1本失ってしまった時、このような疑問をお持ちの方は少なくありません。見た目や噛み合わせの問題から、早急に対処したいと考えるのは当然です。

結論からお伝えすると、部分入れ歯は1本だけでも十分に可能です。

私は日本補綴学会認定専門医として30年以上にわたり、多くの患者さんの入れ歯治療に携わってきました。1本だけの部分入れ歯を希望される方も珍しくありません。

1本だけの部分入れ歯は、人工歯と金具を使った構造で、周囲の健康な歯に固定して使用します。見た目や噛む機能を改善し、日常生活の不便さを軽減する効果があります。

では、具体的にどのような種類があるのか、費用はどのくらいかかるのか、詳しく見ていきましょう。

1本だけでも入れられる部分入れ歯の種類

部分入れ歯と一言でいっても、実はさまざまな種類があります。それぞれに特徴や向き不向きがあるため、患者さんの状態や希望に合わせて最適なものを選ぶことが大切です。

1本だけの部分入れ歯として主に使われるのは、以下の4種類です。

1. レジン床義歯

レジン床義歯は、保険適用の範囲内で治療可能な最も一般的な入れ歯です。プラスチック樹脂(レジン)で作られており、金属製のワイヤー(クラスプ)を使って健康な歯に固定します。

費用が比較的安く、さまざまな口腔内の状態に対応できる柔軟性が特徴です。

ただし、金属のクラスプが目立つ場合があり、装着位置によっては審美性に難があります。また、プラスチック素材のため、強度面では他の種類に劣ります。

2. シリコーン義歯

シリコーン義歯は、義歯床の一部にシリコーン素材を使用した入れ歯です。やわらかい素材のため、装着時の痛みや違和感が少なく、歯茎にフィットしやすいのが特徴です。

特に歯茎の状態が良くない方や、痛みに敏感な方に向いています。

一方で、シリコーンは汚れが付きやすく、こまめなお手入れが必要です。また、やわらかい素材ゆえに、硬い素材の入れ歯と比べて耐久性が劣ります。

3. ノンクラスプデンチャー

ノンクラスプデンチャーは、金属の留め具(クラスプ)を使用せずに作られた入れ歯です。特殊な樹脂を使用しており、見た目が自然で装着時の違和感が少ないのが最大の特徴です。

「入れ歯をしていることを周囲に気づかれたくない」という方に特におすすめです。

ただし、金属製のクラスプがないため、保持力(入れ歯が外れにくい力)がやや弱く、噛む力も他の入れ歯と比べると劣ります。また、樹脂素材のため、強度面では金属床義歯に劣ります。

4. 金属床義歯

金属床義歯は、入れ歯の土台部分に金属(コバルトクロム合金やチタンなど)を使用した入れ歯です。薄く作れるため違和感が少なく、強度と耐久性に優れています。

長期間使用することを考えると、コストパフォーマンスは高いといえるでしょう。

ただし、金属アレルギーのリスクがあり、入れ歯の位置によっては金属部分が見える場合があります。また、初期費用は他の入れ歯と比べて高額になります。

部分入れ歯1本あたりの費用相場

部分入れ歯の費用は、保険適用か自費診療かによって大きく異なります。1本だけの部分入れ歯を作る場合の費用相場を見ていきましょう。

保険適用の部分入れ歯の費用

保険適用の部分入れ歯(レジン床義歯)は、1本あたり3割負担で約5,000円〜15,000円が一般的な費用相場です。

保険診療では、使用できる材料や作り方に制限があり、主にレジン(プラスチック)素材と金属のクラスプを使用します。

費用は抑えられますが、見た目や装着感、耐久性などは自費診療の入れ歯に比べると劣る場合があります。

それでも、基本的な噛む機能は十分に果たせますので、費用を重視する方には適した選択肢です。

自費診療の部分入れ歯の費用

自費診療の部分入れ歯は、種類によって費用が大きく異なります。1本あたりの一般的な費用相場は以下の通りです。

  • シリコーン義歯:約10万円〜50万円
  • ノンクラスプデンチャー:約10万円〜30万円
  • 金属床義歯:約30万円〜60万円

自費診療の入れ歯は、素材やデザインにこだわることができ、より自然な見た目や快適な装着感が得られます。

高品質な素材を使用するため初期費用は高くなりますが、耐久性や使用感を考慮すると、長期的には満足度の高い選択肢となるでしょう。

部分入れ歯1本だけのメリット・デメリット

部分入れ歯を1本だけ入れる場合のメリットとデメリットを理解しておくことも重要です。

メリット

  • 保険適用が可能:基本的に保険診療の対象となるため、費用負担を抑えられます
  • 適用範囲が広い:ほとんどの方が治療を受けられます
  • 取り外しが可能:お手入れがしやすく、就寝時に外せます
  • 治療期間が短い:インプラントと比べて短期間で治療が完了します
  • 外科手術が不要:身体への負担が少なく、高齢の方や持病のある方でも受けやすい治療です

特に、費用面と身体への負担の少なさは、多くの患者さんにとって大きなメリットといえるでしょう。

デメリット

  • 装着感や違和感:慣れるまで時間がかかる場合があります
  • 見た目の問題:特に保険適用の入れ歯は金属のクラスプが目立つことがあります
  • 噛む力の低下:天然歯に比べて噛む力が弱くなります
  • 定期的なメンテナンス:調整や作り直しが必要になる場合があります
  • 周囲の歯への負担:クラスプをかける歯に負担がかかることがあります

これらのデメリットは、入れ歯の種類や個人の状態によって程度が異なります。適切な入れ歯を選び、正しくケアすることで、多くの問題は軽減できるでしょう。

1本だけの部分入れ歯以外の選択肢

部分入れ歯以外にも、1本の歯を失った場合の治療選択肢があります。状況に応じて検討する価値があるでしょう。

インプラント

インプラントは、人工の歯根を顎の骨に埋め込み、その上に人工の歯を装着する治療法です。見た目や機能が天然歯に近く、周囲の歯に負担をかけないのが最大の特徴です。

ただし、外科手術が必要で、治療期間も長く、費用も高額になります。1本あたり約35万円〜40万円が一般的な費用相場です。

骨の状態によっては治療が難しい場合もあり、全ての方に適しているわけではありません。

ブリッジ

ブリッジは、失った歯の両隣の歯を削り、3つの歯がつながった被せ物を装着する治療法です。取り外す必要がなく、見た目も自然です。

保険適用の場合、3割負担で約2万円〜3万円が一般的な費用相場です。

ただし、健康な隣の歯を削る必要があり、将来的にその歯にも負担がかかるというデメリットがあります。

1本だけの部分入れ歯を長持ちさせるコツ

部分入れ歯を長く快適に使用するためには、適切なケアが欠かせません。以下のポイントを心がけましょう。

毎日のお手入れは入れ歯の寿命を大きく左右します。

日常のお手入れ

  • 毎食後の洗浄:食後は入れ歯を外して、ぬるま湯でよく洗いましょう
  • 専用ブラシの使用:入れ歯専用のブラシを使って、汚れを丁寧に落としましょう
  • 洗浄剤の活用:週に2〜3回は入れ歯洗浄剤を使用すると効果的です
  • 保管方法:就寝時は入れ歯を外し、水または洗浄液に浸して保管しましょう

定期的なメンテナンス

  • 歯科医院での定期検診:3〜6ヶ月に一度は歯科医院で検診を受けましょう
  • 調整の依頼:違和感や痛みを感じたら、早めに調整を依頼しましょう
  • 残存歯のケア:残っている自分の歯のケアも忘れずに行いましょう

これらのケアを継続することで、入れ歯の寿命を延ばし、快適に使用することができます。

まとめ:部分入れ歯1本でも十分な選択肢

部分入れ歯は1本だけでも十分に可能であり、多くの方にとって有効な治療選択肢となります。

保険適用のレジン床義歯から自費診療の金属床義歯まで、さまざまな種類があり、それぞれに特徴があります。患者さんの状態や希望、予算に合わせて最適なものを選ぶことが大切です。

費用面では、保険適用の入れ歯なら5,000円〜15,000円程度、自費診療の入れ歯なら10万円〜60万円程度が一般的な相場です。

入れ歯を長持ちさせるためには、日常のお手入れと定期的なメンテナンスが欠かせません。適切なケアを続けることで、快適に使用することができるでしょう。

歯を1本失っても、諦める必要はありません。適切な治療を受けることで、見た目も機能も改善し、豊かな食生活を取り戻すことができます。

お口の健康についてのご相談は、いつでもくろさき歯科にお越しください。一人ひとりに合った最適な治療プランをご提案いたします。

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院長・監修医師

黒崎 俊一(kurosaki syunichi)

歯学博士/日本補綴歯科学会「専門医」

経歴・資格

  • 1987年(昭和62年) 日本大学歯学部 卒業

  • 1992年(平成4年) 日本大学大学院 歯学部 補綴専攻 修了・歯学博士取得

  • 1996年(平成8年) くろさき歯科 開院(当院開業)

  • 日本補綴歯科学会認定「専門医」/日本歯科審美学会会員/日本矯正歯科学会会員

  • 日本大学歯学部 兼任講師として教育にも従事