部分入れ歯の5種類を徹底比較!選び方と費用相場
部分入れ歯とは?基本知識と役割
部分入れ歯は、一部の歯を失った際に、残っている歯を支えにして装着する入れ歯のことです。歯を失うと、食事や会話に不便を感じるだけでなく、顔の形にも影響が出てきます。
失った歯の機能を回復させるためには、インプラント、ブリッジ、部分入れ歯などの選択肢があります。その中でも部分入れ歯は、手術が不要で健康な歯を大きく削る必要がないというメリットがあるのです。
特に複数の歯を失った場合や、残っている歯の状態があまり良くない場合には、部分入れ歯が適している場合が多いでしょう。
部分入れ歯は大きく分けて「歯」「床(しょう)」「クラスプ(バネ)」の3つの部分から構成されています。床は歯ぐきに接する部分で、人工歯を支える土台となります。クラスプは残っている自分の歯に引っかけて入れ歯を固定する金属の留め具です。
部分入れ歯の種類によって、使用する材料や構造が異なり、それぞれに特徴があります。適切な部分入れ歯を選ぶことで、快適な装着感と機能回復を実現できるのです。
保険適用の部分入れ歯とは?特徴と費用
保険適用の部分入れ歯は、健康保険が適用されるため経済的な負担を抑えることができます。一般的に「レジン床義歯」と呼ばれ、歯ぐきと接する床の部分がプラスチック樹脂(レジン)で作られています。
この保険適用の部分入れ歯の最大のメリットは、やはり費用の安さです。3割負担の場合、費用相場は3,000円〜15,000円程度となります。失った歯の数によって部分入れ歯の大きさが変わるため、費用にも幅があります。
しかし、保険適用の部分入れ歯にはいくつかのデメリットもあります。まず、金属の留め具(クラスプ)が目立つため、前歯に装着する場合は審美性に欠けることがあります。また、プラスチック素材のため吸水性があり、変色や臭い移りの可能性があるため、しっかりとお手入れをする必要があります。
さらに、床の部分に一定の厚みが必要なため、装着感に違和感を覚える方も少なくありません。食べ物の温度が伝わりにくくなる点も、デメリットとして挙げられます。
一方で、作成後の修正や調整が比較的容易にできるという利点もあります。また、どの歯科医院でも対応可能なため、万が一トラブルが発生した場合でも安心です。
保険適用の部分入れ歯は、費用を抑えたい方や、初めて入れ歯を使用する方にとって、まずは検討する価値のある選択肢と言えるでしょう。
自費診療の部分入れ歯5種類の特徴と費用相場
保険適用外の自費診療の部分入れ歯は、素材や製作方法に制限がないため、快適性や審美性、耐久性に優れた入れ歯を作ることができます。ここでは、代表的な5種類の自費診療の部分入れ歯について解説します。
1. シリコン義歯(コンフォート義歯)
シリコン義歯は、歯ぐきと接する部分にやわらかい生体用のシリコーン素材を使用した入れ歯です。このシリコーン素材の特性により、歯ぐきにフィットしやすく、装着時の痛みや違和感を軽減する効果があります。
シリコーンの弾力によって入れ歯が歯ぐきに吸着しやすくなり、入れ歯が外れにくく安定感があるのが特徴です。しっかり噛んでも痛みが出にくいため、食事を楽しむことができます。
費用相場は10万円〜55万円程度で、部分入れ歯の範囲や使用する材料によって異なります。
2. ノンクラスプデンチャー
ノンクラスプデンチャーは、金属のバネ(クラスプ)を使わない部分入れ歯です。「バネ(clasp)が、ない(non)」という名前の通り、従来の入れ歯で使われていた金属のバネの代わりに、歯茎の色に似た樹脂を用いています。
金属のバネが見えないため、審美性に優れており、見た目にも入れ歯とわからないのが大きな特徴です。初めて入れ歯を使用する方でも違和感が生じにくく、人前で笑うことに抵抗がなくなります。
費用相場は10万円〜30万円程度です。ただし、金属のバネを使用しないため、保険適用の入れ歯と比べると安定性がやや劣る場合があります。
3. 金属床義歯
金属床義歯は、入れ歯の床の部分に金属(チタンやコバルトクロムなど)を使用した入れ歯です。金属の強度を活かし、プラスチックの入れ歯より約3分の1も薄く作ることができます。
薄く作れるため口腔内での違和感が少なく、会話のしやすさも向上します。また、金属は熱伝導性に優れているため、食べ物の温度をダイレクトに感じることができ、食事の満足度が高まります。
費用相場は30万円〜60万円程度です。金属アレルギーのある方は使用できない場合があるため、事前に確認が必要です。
4. コーヌス義歯
コーヌス義歯は、残っている歯に金属の冠をかぶせ、その上から入れ歯を装着する高度な技術を用いた入れ歯です。コーヌスとはドイツ語で「円錐」を意味し、内冠と外冠の二重構造になっています。
この構造により、非常に安定した装着感が得られ、噛む力もしっかり発揮できます。また、金属のバネが見えないため審美性にも優れています。
費用相場は50万円〜80万円程度と高額ですが、耐久性に優れ、長期間使用できるというメリットがあります。
5. テレスコープ義歯(ドイツ式入れ歯)
テレスコープ義歯は、コーヌス義歯と同様に二重冠構造を持つ入れ歯で、「ドイツ式入れ歯」とも呼ばれています。残った歯を傷めにくく、見た目も自然な入れ歯として、特に50代・60代の方におすすめされています。
テレスコープ義歯の最大の特徴は、残っている歯に負担をかけにくい構造になっていることです。通常の部分入れ歯では、クラスプで引っかける歯に負担がかかり、次々と歯を悪くしてしまうリスクがありますが、テレスコープ義歯ではそのリスクを軽減できます。
費用相場は他の高級入れ歯と同様に50万円〜80万円程度です。
部分入れ歯の選び方のポイント
部分入れ歯を選ぶ際には、いくつかの重要なポイントを考慮する必要があります。ここでは、自分に合った部分入れ歯を選ぶためのポイントを解説します。
装着する位置と審美性
部分入れ歯を装着する位置によって、選ぶべき種類が変わってきます。特に前歯など人から見える部分に装着する場合は、審美性を重視する必要があります。
前歯の部分入れ歯では、金属のバネが見えないノンクラスプデンチャーやテレスコープ義歯などが適しています。一方、奥歯の場合は見た目よりも機能性や耐久性を重視した選択ができます。
前歯は食べ物を大きく噛み切る役割だけでなく、正常な発音をサポートする役割も担っています。また見た目的にも顔や口の第一印象を大きく左右しますので、仕上がりの美しさやぴったりとフィットする感じがとても重要になってきます。
噛む力と耐久性
奥歯は食べ物をすりつぶす重要な役割を担っており、強い噛む力がかかります。そのため、奥歯の部分入れ歯には耐久性の高い金属床義歯やコーヌス義歯などが適しています。
奥歯を失うと食べ物をかみ砕く力が40%程度低下すると考えられており、それが原因で前歯に過剰な負荷がかかったり、全体的な噛み合わせに歪みが生じたりするため、奥歯の欠損にはしっかりとしたサポートが必要です。
特に硬い食べ物を好む方や、強く噛む習慣のある方は、耐久性の高い入れ歯を選ぶことが重要です。
予算と費用対効果
部分入れ歯の費用は、保険適用のものから高額な自費診療のものまで幅広くあります。自分の予算と相談しながら、長期的な視点で考えることが大切です。
安価な保険適用の入れ歯でも、基本的な機能は果たせますが、快適性や耐久性を求める場合は、ある程度の投資が必要になります。高額な入れ歯は初期費用は高いものの、長期間使用できるため、結果的にコストパフォーマンスが良い場合もあります。
また、部分入れ歯は定期的なメンテナンスや調整が必要になることもあるため、その費用も考慮に入れておくとよいでしょう。
アレルギーの有無
金属アレルギーをお持ちの方は、金属を使用した部分入れ歯を避ける必要があります。その場合は、ノンクラスプデンチャーやシリコン義歯など、金属を使用しない選択肢を検討しましょう。
医療用のシリコンを用いているシリコン義歯は、アレルギー反応が生じるリスクが低く、安全性が高いという特徴があります。不安な場合は、事前に歯科医師に相談し、アレルギーテストを受けることをおすすめします。
部分入れ歯のメリット・デメリット
部分入れ歯には、他の治療法と比較していくつかのメリットとデメリットがあります。ここでは、部分入れ歯全般のメリット・デメリットについて解説します。
部分入れ歯のメリット
部分入れ歯の最大のメリットは、インプラントと違って手術が不要、ブリッジと違って健康な歯を大きく削る必要がないという点です。体や口に大きな負担をかけることなく歯の機能を取り戻すことができるため、なるべく他の歯を残したいという方におすすめの治療法となります。
また、取り外しが可能なので口腔内や入れ歯そのものを清潔に保つことができます。万が一の破損や不具合に伴う修理も、インプラントやブリッジよりも比較的容易に対応することが可能です。
さらに、保険適用の部分入れ歯であれば、経済的な負担を抑えながら治療を受けられるという大きなメリットもあります。
部分入れ歯のデメリット
部分入れ歯にもいくつかのデメリットがあります。まず、部分入れ歯を装着してしばらくは、異物感や慣れない感じに戸惑う患者様もいらっしゃいます。また慣れるまでの一定期間ではありますが、着脱に時間を要してしまうこともあります。
特に保険適用の部分入れ歯では、金属のバネが見えることがあるため、審美性に欠ける場合があります。また、プラスチック素材のため、食べ物の温度を感じにくくなることもあります。
部分入れ歯は残っている歯に負担をかけることがあるため、定期的なメンテナンスが必要です。特に通常のクラスプ義歯では、クラスプで引っかける歯に負担がかかり、次々と歯を悪くしてしまうリスクがあります。
これらのデメリットは、自費診療の高品質な部分入れ歯を選ぶことで軽減できる場合が多いです。自分の状況や優先順位に合わせて、最適な部分入れ歯を選びましょう。
部分入れ歯の寿命と日常のケア方法
部分入れ歯の寿命は、種類や使用状況、お手入れの方法によって大きく異なります。一般的に、保険適用の部分入れ歯の寿命は3〜5年程度、自費診療の高品質な部分入れ歯は5〜10年以上と言われています。
部分入れ歯を長持ちさせるためには、適切な日常のケアが欠かせません。以下に、部分入れ歯のお手入れ方法について解説します。
毎日のお手入れ方法
部分入れ歯は、毎食後に取り外して水で軽く洗い流すことが基本です。その後、専用の入れ歯ブラシを使用して、入れ歯全体を丁寧に洗浄します。特に歯と歯の間や、クラスプ(バネ)の部分は汚れがたまりやすいので、注意して洗浄しましょう。
洗浄の際は、一般の歯磨き粉は使用せず、入れ歯専用の洗浄剤を使用することをおすすめします。一般の歯磨き粉には研磨剤が含まれており、入れ歯に傷をつける可能性があります。
シリコン義歯など、特殊な素材を使用した部分入れ歯は、それぞれに適した洗浄方法があるため、歯科医師の指示に従ってケアを行いましょう。
定期的なメンテナンス
日常のケアに加えて、定期的に歯科医院でのメンテナンスを受けることも重要です。一般的には、3〜6ヶ月に一度のペースで歯科医院を受診し、専門的なクリーニングや調整を受けることをおすすめします。
時間の経過とともに、口腔内の状態は変化していきます。特に残っている歯の状態や歯ぐきの形状が変わると、部分入れ歯のフィット感が悪くなることがあります。そのような場合は、早めに歯科医院で調整を受けることが大切です。
定期的なメンテナンスを受けることで、部分入れ歯の寿命を延ばすだけでなく、残っている自分の歯を守ることにもつながります。
まとめ:自分に合った部分入れ歯を選ぼう
部分入れ歯には、保険適用のレジン床義歯から、シリコン義歯、ノンクラスプデンチャー、金属床義歯、コーヌス義歯、テレスコープ義歯まで、様々な種類があります。それぞれに特徴や費用が異なるため、自分の状況や優先順位に合わせて選ぶことが大切です。
部分入れ歯を選ぶ際のポイントとしては、装着する位置と審美性、噛む力と耐久性、予算と費用対効果、アレルギーの有無などが挙げられます。これらの要素を総合的に考慮して、最適な部分入れ歯を選びましょう。
また、部分入れ歯は適切なケアを行うことで、より長く快適に使用することができます。毎日の丁寧なお手入れと定期的な歯科医院でのメンテナンスを心がけましょう。
部分入れ歯について不安や疑問がある場合は、歯科医師に相談することをおすすめします。専門家のアドバイスを受けながら、自分に合った部分入れ歯を選ぶことで、快適な生活を取り戻すことができるでしょう。
くろさき歯科では、患者様一人ひとりのお口の状態や生活スタイルに合わせた最適な部分入れ歯をご提案しています。入れ歯に関するご相談は、お気軽にくろさき歯科までお問い合わせください。専門医が丁寧にご説明いたします。
院長・監修医師
黒崎 俊一(kurosaki syunichi)
歯学博士/日本補綴歯科学会「専門医」
経歴・資格
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1987年(昭和62年) 日本大学歯学部 卒業
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1992年(平成4年) 日本大学大学院 歯学部 補綴専攻 修了・歯学博士取得
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1996年(平成8年) くろさき歯科 開院(当院開業)
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日本補綴歯科学会認定「専門医」/日本歯科審美学会会員/日本矯正歯科学会会員
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日本大学歯学部 兼任講師として教育にも従事