入れ歯使用時の口腔乾燥対策〜快適な装着感を保つ6つの方法
入れ歯使用時の口腔乾燥が引き起こす問題とは
入れ歯を使用していると、口の中が乾燥して不快に感じることがあります。この症状は多くの方が経験するもので、決して珍しいものではありません。
口腔乾燥は単なる不快感だけでなく、入れ歯の装着感や機能にも大きく影響します。特に、入れ歯を長時間使用している方にとって、この問題は日常生活の質を左右する重要な課題となっています。
口腔内が乾燥すると、入れ歯と口腔粘膜の間の摩擦が増加し、痛みやかぶれの原因となることがあります。また、唾液には自浄作用や抗菌作用があるため、唾液の減少は口腔内の細菌増殖を促進し、口臭や口内炎のリスクを高めます。
私は日本補綴学会認定専門医として、多くの患者さんから「入れ歯をつけると口が乾く」というご相談を受けてきました。この症状は特に高齢の方に多く見られますが、年齢に関わらず発生する可能性があります。
では、なぜ入れ歯使用時に口腔乾燥が起こるのでしょうか?
入れ歯使用時に口腔乾燥が起こる主な原因
入れ歯使用時の口腔乾燥には、いくつかの原因が考えられます。これらを理解することで、効果的な対策を講じることができるでしょう。
まず挙げられるのが、入れ歯の装着による唾液腺への影響です。入れ歯を装着すると、口腔内の感覚が変化し、唾液の分泌が減少することがあります。特に、入れ歯の異物感や圧迫感が唾液腺に影響を与え、唾液の分泌を抑制してしまうのです。
また、入れ歯が口の中にあると舌や頬の動きが制限されるため、唾液の分泌を促す刺激が減少します。これも口腔乾燥の一因となっています。
入れ歯の装着に伴うストレスや不安も、唾液の分泌を抑制する要因となります。新しい環境に慣れるまでの間、口の中が乾燥することは少なくありません。心理的なストレスが唾液の分泌に影響を与えることは、さまざまな研究で示されています。
加齢による影響も見逃せません。年齢とともに、唾液腺の機能は低下します。もともと唾液の分泌が減少している高齢者の場合、入れ歯の装着による乾燥感がより顕著に感じられることがあります。
さらに、服用している薬の副作用として口腔乾燥が生じることもあります。特に高血圧治療薬、抗うつ剤、抗ヒスタミン剤などは、唾液の分泌を減少させる作用があることが知られています。
口腔乾燥がもたらす健康リスク
口腔乾燥は単なる不快感にとどまらず、さまざまな健康リスクをもたらします。唾液には口腔内を清潔に保つ重要な役割があるため、その減少は多くの問題を引き起こす可能性があるのです。
まず、虫歯や歯周病のリスクが高まります。唾液には抗菌作用があり、口腔内の細菌の増殖を抑える働きをしています。しかし、口が乾くと唾液の分泌が減少し、細菌が繁殖しやすくなります。
その結果、虫歯や歯周病のリスクが高まるのです。特に歯周病は、進行すると歯を支える骨を破壊し、最終的には歯が抜け落ちる原因となります。
口臭も口腔乾燥の結果として発生します。唾液が少ないと、口内の食べかすが洗い流されず細菌が繁殖しやすくなり、口臭が発生するのです。口臭は自分では気付きにくいですが、周囲に不快感を与える可能性があります。
口内炎ができやすくなるのも口腔乾燥の影響です。口の中が乾燥すると、粘膜が傷つきやすくなります。口内炎ができやすくなり、食事や会話に支障をきたすかもしれません。
誤嚥のリスクが高まることも重要な問題です。唾液の潤滑作用が減少するため、食べ物の嚥下が困難になることもあります。特に、高齢者の場合は誤嚥のリスクが増し、肺炎を引き起こす可能性が高まります。
唾液には消化酵素が含まれており、食べ物の消化を助ける役割も担っています。そのため、唾液が不足すると消化不良を起こしやすくなります。消化不良が続くと栄養素の吸収が不十分になり、体全体の健康に悪影響を及ぼす可能性もあるでしょう。
入れ歯使用時の口腔乾燥対策6つの方法
入れ歯使用時の口腔乾燥に対しては、いくつかの効果的な対策があります。日常生活に取り入れやすい方法を6つご紹介します。
1. こまめな水分補給を心がける
最も基本的な対策は、こまめに水分を摂取することです。水やお茶などの飲み物を小まめに飲むことで、口腔内の湿度を保つことができます。特に、食事の前後や会話が多い場面の前には、意識して水分を摂るようにしましょう。
ただし、カフェインを含む飲み物(コーヒーや紅茶など)やアルコールは利尿作用があり、かえって体内の水分を減少させる可能性があるため、摂取量に注意が必要です。
2. 無糖のガムを噛む習慣をつける
キシリトールなどの無糖ガムを噛むことは、唾液の分泌を促進する効果があります。ガムを噛む行為自体が口腔内の刺激となり、唾液腺を活性化させるのです。
特に食後にガムを噛むことで、口腔内の清掃効果も期待できます。ただし、顎関節に問題がある方は、歯科医師に相談してからガムを使用するようにしましょう。
3. 口腔保湿剤を活用する
現在は様々な口腔保湿剤が市販されています。スプレータイプ、ジェルタイプ、マウスウォッシュタイプなど、使いやすい形状のものを選びましょう。
乾燥の程度に合わせて使い分けることも重要です。軽度の乾燥にはスプレータイプ、重度の乾燥にはジェルタイプが適しています。ジェルタイプは口腔内になじむまでに時間がかかるため、スプレータイプと併用するとより効果的です。
まずスプレータイプの保湿剤を塗布した後で、保湿効果の高いジェルタイプをさらに塗ります。こうすることで、比較的短時間でしっかりと口腔内を潤すことができます。
4. 入れ歯の適合性を確認する
入れ歯が合っていないと、口腔内の不快感や乾燥感が増す可能性があります。定期的に歯科医院を受診して、入れ歯の適合性を確認してもらいましょう。
特に、長期間同じ入れ歯を使用している場合は、顎の形状の変化により合わなくなっていることがあります。入れ歯が合わないと感じたら、我慢せずに早めに調整を受けることが大切です。
5. 室内の湿度を適切に保つ
室内の乾燥も口腔乾燥に影響します。特に冬場や空調を使用する環境では、室内が乾燥しがちです。加湿器を使用するなどして、適切な湿度(50〜60%程度)を保つよう心がけましょう。
就寝時に口呼吸をしている方は、口腔乾燥が悪化する可能性があります。この場合、就寝前の保湿ケアを特に念入りに行うことをおすすめします。
6. 食事内容を工夫する
食事内容も口腔乾燥に影響します。唾液の分泌を促進する食品を積極的に摂取しましょう。例えば、よく噛む必要のある食品(根菜類、きのこ類など)は唾液の分泌を促します。
また、水分を多く含む食品(スイカ、きゅうり、トマトなど)も口腔内の潤いを保つのに役立ちます。逆に、塩分や糖分の多い食品は水分を奪う傾向があるため、摂取量に注意が必要です。
入れ歯の日常ケアと口腔乾燥予防の関係
入れ歯の適切なケアは、口腔乾燥の予防や軽減に大きく関わっています。毎日の丁寧なケアが、快適な入れ歯生活の鍵となるのです。
入れ歯は毎食後に清掃することが理想的です。食べかすや細菌が付着したままだと、不快感や口臭の原因となるだけでなく、口腔内の環境を悪化させ、乾燥感を増強させることがあります。
入れ歯の洗浄には、専用のブラシと洗浄剤を使用しましょう。通常の歯ブラシは硬すぎる場合があり、入れ歯を傷つける可能性があります。傷がついた入れ歯は細菌の温床となり、口腔環境の悪化につながります。
夜間は入れ歯を外して保管することをおすすめします。これにより、口腔粘膜が休息でき、唾液腺の機能回復にも役立ちます。入れ歯を外している間は、専用の洗浄剤に浸けておくと効果的です。
入れ歯を外した後のお口のケアも重要です。残っている歯や歯茎、舌なども丁寧に清掃しましょう。特に舌の表面は細菌が繁殖しやすいため、舌ブラシや柔らかい歯ブラシで優しく清掃することをおすすめします。
定期的な歯科検診も欠かせません。入れ歯の適合性や口腔内の状態を専門家にチェックしてもらうことで、問題の早期発見・早期対応が可能になります。一般的には3〜6ヶ月に一度の受診が望ましいでしょう。
専門医による口腔乾燥症の治療法
口腔乾燥の症状が重度の場合や、自己ケアだけでは改善しない場合は、専門医による治療が必要になることがあります。口腔乾燥症(ドライマウス)として治療の対象となるケースもあるのです。
まず、口腔乾燥の原因を特定するための検査が行われます。唾液分泌量の測定や、唾液腺の機能検査などが実施されることがあります。原因によって治療法が異なるため、正確な診断が重要です。
薬物療法として、唾液分泌促進薬が処方されることがあります。ピロカルピン塩酸塩(サラジェン)などの薬剤は、唾液腺を刺激して唾液の分泌を促進する効果があります。ただし、副作用もあるため、医師の指導のもとで使用する必要があります。
また、口腔乾燥が薬の副作用によるものであれば、服用している薬の変更や調整が検討されることもあります。ただし、自己判断で薬の服用を中止したり変更したりすることは危険ですので、必ず医師に相談しましょう。
シェーグレン症候群など、自己免疫疾患が原因の場合は、それに対する治療も並行して行われます。全身的な治療と口腔ケアを組み合わせることで、症状の改善を目指します。
入れ歯の調整や再製作も治療の一環として行われることがあります。特に長期間使用している入れ歯は、口腔内の状態変化に合わせた調整が必要です。シリコン素材を使用した柔らかい入れ歯や、金属アレルギーに配慮した素材の入れ歯など、患者さんの状態に合わせた選択肢があります。
まとめ:快適な入れ歯生活のために
入れ歯使用時の口腔乾燥は、多くの方が経験する問題ですが、適切な対策を講じることで大幅に改善することができます。日常生活での工夫と定期的な専門家のケアを組み合わせることが、快適な入れ歯生活の鍵となります。
こまめな水分補給、無糖ガムの活用、口腔保湿剤の使用、入れ歯の適合確認、室内湿度の管理、食事内容の工夫という6つの対策を日常に取り入れることで、口腔乾燥の症状を軽減できるでしょう。
また、入れ歯の日常ケアも口腔乾燥予防に重要な役割を果たします。毎食後の清掃、専用ブラシと洗浄剤の使用、夜間の適切な保管など、基本的なケアを怠らないようにしましょう。
症状が重度の場合や自己ケアで改善しない場合は、専門医による診断と治療を受けることをおすすめします。原因に応じた適切な治療により、症状の改善が期待できます。
入れ歯の不具合や口腔乾燥でお悩みの方は、ぜひ専門医にご相談ください。くろさき歯科では、患者さま一人ひとりの状態に合わせた入れ歯の提案と調整を行っています。快適な入れ歯生活のために、お気軽にご相談いただければ幸いです。
詳しい情報や無料相談については、入れ歯 くろさき歯科のウェブサイトをご覧ください。お口の健康と快適な生活をサポートいたします。
院長・監修医師
黒崎 俊一(kurosaki syunichi)
歯学博士/日本補綴歯科学会「専門医」
経歴・資格
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1987年(昭和62年) 日本大学歯学部 卒業
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1992年(平成4年) 日本大学大学院 歯学部 補綴専攻 修了・歯学博士取得
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1996年(平成8年) くろさき歯科 開院(当院開業)
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日本補綴歯科学会認定「専門医」/日本歯科審美学会会員/日本矯正歯科学会会員
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日本大学歯学部 兼任講師として教育にも従事