入れ歯を作る前に知っておきたいポイント
入れ歯が出来るまで
入れ歯を作ろうと計画されている患者さまに、入れ歯が出来るまでの流れについてちょっとご紹介しておきましょう。
ただし、この内容に関しては、どこの歯科医院でも同じ流れになるわけではありません。
また、保険診療の入れ歯なのか、自由診療の入れ歯なのかによっても大きく行程は変わるでしょう。
ここでは、くろさき歯科で行っている基本的な入れ歯が出来るまでの流れだと思ってご理解下さいね。
まずは、おおまかにポイントを追っていきましょう。
診査や診断においては、過去にどのような入れ歯を作られたのか、その経緯についてお聞きしています。
ここで、現在お困りの点やこれからのご希望などを細かくお伺いしているのですが、より詳しく教えていただくことが、一緒に良い入れ歯を作って行くための大事なステップになります。
痛みがある場合、具体的にどこがどのように痛むのか、これは何も口の中に限ったことではありません。
入れ歯を使い出してからの不具合については、すべてお聞きしたいと思っています。
今後のご希望としては、具体的に何が食べたい、何を噛めるようになりたいといったご希望をお伺い出来ると良いですね。
どういった治療が必要かがわかったところで、治療方法のご説明をさせていただきます。
もちろん費用も含めてしっかりカウンセリングさせていただき、患者さまに納得して安心していただきたいと思います。
患者さまが納得された方法で、実際に治療がスタートします。
お試しの入れ歯を使っていただきながら、どういったご要望を持たれるかを細かく伺っていきます。
次はいよいよ仮の入れ歯の製作です。
「仮」なのにいよいよ、と申し上げるのは、この仮入れ歯で徹底的に身体に合うところまで突き詰めて行くからです。
仮の入れ歯が完全にフィットするまでは、妥協はしません。
実際にこれを日常生活で使っていただき、直すべき部分は確実に直して、理想を追求する作業を行います。
仮入れ歯が十分納得のレベルになった、というところで初めて本入れ歯の製作です。
この仮入れ歯は仮とは言えスペアとして使えるレベルになりますので、それも一つのメリットですね。
本入れ歯が出来たら試着を始め、3ヶ月から6ヶ月毎のメンテナンスを行いながら、更に最高の噛み合わせを追求します。
「山本式咀嚼機能診査表」という、何が食べられるようになったかのチェック表があるのですが、それを見ながら少しずつ仕上げて行きましょう。
今まで食べられなかったものがしっかり噛めるようになるのを拝見するのは、本当に嬉しい成果ですよ。
入れ歯の裏打ち(修正方法)とは?
入れ歯には、「裏打ち」という修正方法があります。
「リライン」や「リベース」とも言いますが、入れ歯の内面の削除と新しい材料の追加だと言えば良いでしょうか。
裏打ち修理とも言いますね。
この手法をうまく行えない歯科医師も少なくないらしく、十分な調整が出来ないために患者さまが合わない入れ歯を持って歯科医師を転々とするといった残念な話を耳にするケースもあります。
歯科医師の中にも、あまり入れ歯が得意ではない医師もいるのかもしれません。
総義歯であったり、局部床義歯などを実際に作ったことがないと、結局入れ歯の調整も得意ではなくなります。
合わなくなったらそれは捨てて、新しく作れば良いという考えにはさすがに賛同しかねますね。
入れ歯は使い捨ての道具ではなく、その人の身体の一部であるべきです。
くろさき歯科が、他の歯科医院で作った入れ歯であっても調整出来るかどうか取り組むのも、そうした考えあってのことです。
どのみち使い捨て思考の入れ歯では、何度作り直しても依然として問題が改善することはないでしょう。
最初からしっかり噛める丈夫な入れ歯を作っておけば、長年使って合わなくなった時でも比較的簡単な裏打ち調整で入れ歯をまた使えるものに蘇らせることも可能な場合が多いのです。
口の中は年々変化しますし、顎の形も歯茎の厚みも変わって来ます。
これは誰にでも起こることで、どんなに良い入れ歯を作っても、いつかは必ず合わなくなってくる時が来ることは避けられません。
でもその時が遅いのか早いのかは人によるのでわかりませんし、どのように変化するのかも完全に予測は出来ません。
その時が来た時に調整する手段があるのかないのか、これは作った入れ歯の種類にもよるので、最初から患者さまがしっかりと理解していらっしゃることが大切です。
入れ歯を使い続けていらっしゃる限り、何回かこうした裏打ち調整や修理などを行う機会があるでしょう。
多少費用がかかったとしても、最初から間違いの無い入れ歯作りをしておけば、その時になって「やはりあの判断は間違っていなかったのだな」と実感していただけるはずです。
そのためにも、くろさき歯科では自由診療の入れ歯をおすすめしています。
確かに費用は安いに越したことはないのですが、かかった費用にきちんとした意味があるのであれば、納得出来る内容があるのであれば、それは根拠に値します。
そして、先々まで見越してきちんとメンテナンスが出来る歯科医院を選んで下さい。
歯科医院のハシゴをして、入れ歯コレクションを増やして欲しくはないのです。
入れ歯の種類は?
入れ歯には本当にたくさんの種類があります。
保険適用の入れ歯は決まっていますが、自由診療の入れ歯の種類は本当に豊富です。
基本的には患者さまの状況によって使い分けることになりますが、もちろん患者さまにご希望があれば、それを優先して検討します。
まずは根本的な種類からまとめておきましょう。
入れ歯は、失った歯の本数や場所によって適切なタイプを判断します。
総入れ歯は、ご自分の歯が1本も残っていない状況で使われます。
部分入れ歯は、歯を部分的に失った場合に使われますが、逆に言うと丈夫な歯が1本でも残っていれば、部分入れ歯が可能となります。
基本的には失った部分の粘膜に人工歯のついた床を乗せ、残った歯にクラスプというツメをかけて安定させます。
このクラスプが金属で目立ちやすいので、目立たない工夫がされたものもあります。
金属床義歯というのは、土台となる「床」の部分が金属でできているものです。
金属以外ではレジンで作ることも可能で、その場合はレジン床義歯といいます。
ただ、金属は強度が強いために床の厚みを薄く加工すること可能なため、違和感を極力減らすことが期待できます。
レジン床義歯は安価で作れて修理が比較的簡単なのがメリットでしょう。
最近は「金属を使わない入れ歯」というのが人気ですが、やはり口の中に金属が見えると、審美的な問題があります。
また、金属には金属アレルギーの心配もあるため、避けたいという方もいらっしゃいますね。
クラスプと言われるツメ(バネ)が口を開けた時に目立つので、それを使わないノンクラスプデンチャーという入れ歯もあります。
こちらは審美面が非常に優れているので、一目見たくらいでは本当の歯と区別はつかないほど自然な仕上がりが可能です。
そのほかにも多数の種類があります。
それぞれの入れ歯には特筆すべき特徴があり、使われる方が生活の中で何を優先されたいかによって細かく選ぶことが出来ます。
例えば、「トルティッシュプレート」というのは、床に目に見えないほどの細かい穴が無数にい開いているタイプです。
穴があるとどう違うかというと、液体飲食物の風味がダイレクトに感じられるという大きなメリットがあるのです。
お酒を飲むのが楽しみな方が、「入れ歯にしたらぜんぜんうまさを感じなくなった」という状況になったら、おそらく入れ歯を使わなくなってしまうでしょう。
穴から風味を感じられれば、ビールでもお味噌汁でも、味を従来の入れ歯以上に楽しむことが出来るのです。
このように、義歯だけでなく、人口の歯茎だけでなく、床(プレート)にいろいろな工夫を施した入れ歯もたくさんあります。
是非、どんなことが出来るのか、歯科医師に相談してみて下さいね。
入れ歯の耐用年数はどのくらい?
入れ歯の耐用年数についてはさまざまな説があります。
中には10年も20年も実際に使われていらっしゃる方もおられますし、何年で作り変えなさい、と言えるものではありません。
社団法人 日本補綴(ほてつ)歯科学会のホームページには「補綴歯科なんでも質問箱」というページがあるのですが、そこにも「入れ歯は何年ぐらいで作り変えたほうが良いですか?」という質問が寄せられていて、答えとしては状態によりさまざまなので、合わなくなったり不具合を感じた場合に早めに歯科を受診して相談することをお勧めしています。
ただ、ノンクラスプデンチャーという、金属のツメ=クラスプを使わないタイプの入れ歯があるのですが、これは素材自体に寿命があり、約3年ほどで作り直しが必要とされています。
弾性に富み、装着感がほとんどないのでとても快適に使える入れ歯なのですが、どうしても素材的に長持ちさせることが出来ないのですね。
材質の特徴でつなぎ目もほとんどなく、お掃除もしやすいのでとても衛生的なのですが、耐用年数の意味ではデメリットも大きいのです。
やはり金属を使った入れ歯のほうが、寿命という意味では確実に長持ちします。
「自費診療で入れ歯を作ったけれど、3年ごとに作り変えろと言われて困っている」というような相談が持ち上がっているような話も目にしますが、これは一番最初に治療方針をしっかり患者さまにご説明して納得していただいていれば、そんな問題は起こらないはずですよね。
ノンクラスプデンチャーは確かに付けていてメリットも大きいですが、ピンク色の部分の素材に寿命があることと、金属製のバネを使っていないので入れ歯が緩むなどの装着ズレが出た場合に調整が効かないことは最初から承知しておかなければいけません。
例えそれでこまめな作り直しになるとしても、やはり若い年代の患者さまや接客業の患者さまなどにとっては、ノンクラスプデンチャーは魅力的な選択肢であることに違いはありません。
要は、デメリットの部分もきちんと理解して納得しているかどうかということです。
ノンクラスプデンチャーの他にもシリコン素材を使った入れ歯などは、痛みは少ないですがやはり劣化が早いものです。
早い時には2年程度しか持たない可能性もあるでしょう。
自費診療ですから、費用面を考えても、それでは困るとおっしゃられる患者さまがいらっしゃるのも当然です。
その治療方針にはどういった特徴があるのか、どういう経緯が考えられるのか、入れ歯を作った後まできちんと説明出来る歯科医院を選んで下さいね。