入れ歯の問題と心の問題

初めて入れ歯を入れた時、大抵の方は不安になるようです。また、入れ歯を使い始めてから心の問題を抱えるようになったという方もいます。これから入れ歯をお使いになる方のために、入れ歯と心の深い関係と、対処法をご説明します。

高齢期の入れ歯問題と心の問題

物を食べた時、単に食べたものの味だけでなく、微妙な食感、繊細な香りも含めて味わっています。ですから、人間の口の感覚は非常に繊細です。髪の毛が一本口の中に入っても分かるほどです。入れ歯は、人工的な異物ですから、口の中に入れて違和感を覚えるのは自然な反応です。ですが、大勢の方が入れ歯を使い続けています。それには、人間には慣れる力、環境に順応する力が備わっているからです。

新しく入れ歯を作った時、違和感、異物感を感じて気持ち悪いかもしれません。ですが、たいていの方は2、3日、長くても1ヵ月もすると慣れてきます。ですから、焦らず、ゆっくりと慣らしていきましょう。慣れるために、入れ歯に神経を集中しないように、おしゃべりしたり、歌を歌ったり、何か趣味に没頭するなど、入れ歯を口に装着したままで、他のことを行ってみてください。いずれ、気にならなくなるはずです。つらければ、最初は短時間で、少しずつ時間を伸ばして慣らしていくと良いかもしれません。

それでも、どうしても入れ歯を入れると気持ち悪い、不快だという方は、入れ歯そのものが問題なのかもしれません。自分に合った入れ歯ならば、気持ち悪さは軽減されます。入れ歯が気になりすぎると、食べるのが楽しみでなくなり、気持ちが沈みます。早めにご相談ください。

認知症と入れ歯の関係

認知症というと、脳の問題だと考える方が多いですが、実は歯とも深い関係があります。日本のある大学が65歳以上の男女を対象に調査したところ、歯が20本以上残っている方や、入れ歯を使用している方は認知症になりにくいというデータが出ました。つまり、咀嚼することは、脳の機能にとって大切だということです。

さらに、研究は続き、ガムを噛んだ場合と、噛まない場合とでの脳の血流を調べたところ、咀嚼している時の方が脳の血流がよくなり、しかも前頭前野が活発になりました。前頭前野は考えたり、記憶したり、判断を下したり、感情をコントロールしたりする大切な場所です。前頭前野が働かないと、怒りやすくなったり、記憶力が低下したり、正しい判断を下せなくなったりします。ですから。自分に合った入れ歯で、食事を楽しむことが認知症予防につながると期待されています。